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それは突然だった。ブンちゃんとの関係はすっかり元に戻って、かといっていじめが再発することもなく。わたしが知らないところでなにかしてもらったのかと思って利いたけどなにもないの一点張りでよくわからないまま、まるで何事もなかったかのように今までの日常が戻った頃。ブンちゃんが購買にご飯を買いに行って幸村くんのところに行ったがために別行動になった昼休み。わたしは学年の違う男の子に呼び出された。そうして言われたのは告白の言葉。


「俺、川岸先輩のことが好きです」

「えっ」


名前も知らない彼はテニス部員、つまるところブンちゃんの後輩だと言った。ブンちゃんがわたしの作ったお弁当の話をしているのを聞き、ブンちゃんにお弁当を作るわたしに興味を持ったらしい。そしてわたしがブンちゃんの彼女ではないしそういう雰囲気ではないことを知り、たまたまブンちゃんと楽しそうに話しているわたしを見て、そのときにどうやら興味が好意に変わったそうだ。それだけでこの後輩くんは特殊だなあと思った。更にブンちゃんとわたしの関係性やらなんやらをそれなりにこの目の前の彼は知っていると思うのだけどそれでもこうしてアタックしてきたからすごいと思う。


「もちろん川岸先輩が丸井先輩とすっげー仲良くて俺なんかが入る隙間なんてないと思ってます」


あ、やっぱりわたしとブンちゃんの親密さをこの子も知ってるんだ。だから、と彼は続けた。


「先輩に俺のこと好きになってもらおうとは思ってません。ただ思い出として、次の日曜日オフなんで俺と遊んでくれませんか?」


数秒、瞬きすることを忘れた。え?なんて?いやなんて言ったか聞いてる。聞こえてた。そうじゃなくて。わた、わたしと遊ぶ?この子は正気なのか?疑問符が頭上で飛び交った。


「友達と遊ぶ感覚で構いません。むしろそういう感じで遊んでほしいんです。1日だけ俺に付き合ってくれませんか?」


必死な訴えだった。このとき本来なら断るべきなのかもわたしには分からない。例えそうだったとしても、わたしには断る理由が見つからなかった。だけど、問題はある。


「…わたし、友達感覚でって言われてもそんな友達居ないから、どんな感じなのかよくわかんないけど、それでもよければ」

「!!ありがとうございます!!!」

「あ、あと」

「?はい」

「……場合によってはブンちゃんにこのことが伝わるけど、大丈夫?」

「あ、はい、大丈夫です!なんなら今日の部活で直接丸井先輩に話しておくつもりでしたから」

「、そっか」


…この子のなかでブンちゃんとわたしの関係性ってどうなってるんだろう。とことん目の前の彼は不思議だ。且ついい子だ。ともあれ待ち合わせの時間と場所を決めて彼とはそこで別れ、教室に戻るとブンちゃんはすでに戻っていた。


「…どこ行ってたんだよ」


不機嫌、とは少し違うけど決して機嫌がいいわけではない様子で聞いてくるブンちゃん。以前の件から隠し事をしたくないわたしはさっきのことを包み隠さずに伝えた。


「……後輩と遊ぶんなら、まあ、楽しんでこいよ」


どこか複雑そうな感じでブンちゃんは焼きそばパンを頬張った。






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