「あれ、財前くんは帰らないの?」 「今日、部長が用事あるからって鍵当番頼まれたんすわ」 「あ、そうなの?じゃあ早く日誌書かなきゃ」 相変わらず無表情のまま財前くんは話した。いつもは白石くんと話しながら部活の日誌を書いてるから不思議な感じ。黙々と日誌を書いてると不意に先輩、と呼ばれた。 「なに?」 「いじめられました?」 「……へ?」 「転校してきてから」 「え、な、なにその私がいじめられっ子前提の質問…」 「いや、ちょっと気になることがあったんで」 頭に疑問符を飛ばしていると財前くんはそれでどうなんすか、とまるで明日の部活何時からですか、と聞くような声色で聞いてくるもんだから一瞬答えに戸惑ったけどいじめなんて今までされたことないから首をぶんぶんと横に振った。 「…へぇ」 「な、なに…?」 「ならもうそろそろっすかね」 「え、え?」 まるで私がいじめられることが確定しているかのように財前くんは呟く。っていうか分かってるのに彼は止めるつもりが無いんだろうか。もしかして私、財前くんに嫌われてるのかな? 「先輩、極力1人にならん方が身のためっすよ」 「………?」 「なあ先輩」 ファンクラブって知ってはります?財前くんは視線を床に落としたまま淡々と話した。 「なんや俺らのファンクラブらしいんすけど」 「…本当にモテるんだね、テニス部のみんなって」 「まあ、そうなんすけど。そのファンクラブ、厄介なんすわ」 「へ?」 「俺らがまるであの人らの所有物かのように、ファンクラブ以外の女が俺らと関わるとお呼び出し」 「え」 「せやからきっと絢香先輩もそろそろ呼ばれますよ」 何するか分からへんさかい気ぃつけてくださいよ、と今度は私の目を見て言う。私はうんと頷くことしか出来なかった。 |