アスチルベ | ナノ


「正式なマネージャーになるのは始業式の後やけど、1日でも早く馴染むために来てもろてるから」

「よ、よろしくお願いします…!」


謙也くんのランニングを見て白石くんと会ってマネージャーとはどういうことをするのか教えてもらって、部員のみんながぞろぞろ来て渡邊先生も来てみんなが揃ったところで私は白石くんの隣で挨拶をする。それから多く関わるかもしれへんからという白石くんの言葉で私はレギュラーを紹介してもらっている。


「…で、こいつが1つ下の財前光。謙也とダブルス組んでんねん」

「よ、よろしくね財前くん」

「…ッス」

「これでレギュラー全員や」

「ありがとう、白石くん」

「早よみんなと馴染んでな」

「うん!」


みんないい人そうで頑張ろう、そう意気込むと財前くんが何かを思い出したように白石くんを呼んだ。


「なや、」

「遠山金太郎っちゅうまんま野生児の奴が居るんスけど」

「おん」

「そいつものごっつ手のかかる奴なんスわ」

「おん」

「せやから今から対処法考えといた方がええですよ」

「っちゅうことはテニス部入るんやな?」

「前本人が言うてたんで高確率で入ると思いますわ」


楽しみやなぁ、と白石くんは本当に楽しそうな顔をして言った。


「あ、絢香ちゃんはもう自由に動いてええよ」

「え?」

「レギュラーの紹介終わったさかい後は見学するなりなんなり自由に動いてええよ」

「う、うん」

「何かあったらそのへんの奴に聞いてくれて構わへんから」

「うん」


と言っても何もすることが無いわけじゃない私は一旦白石くんと財前くんと別れて部室へ向かった。





がちゃ、と扉が開く。


「…何しとんの?」

「謙也くん、」


そこには汗だくになった謙也くんで、私の手元を見るなり目を丸くした。


「もしかしてスポドリ作ってたん?」

「うん…」


まだ正式なマネージャーじゃないけど、私が出来ることをしたくて、思いついたのは飲み物を用意することだった。白石くんには作り方を教えてもらっていたから頑張って作ったのだ。謙也くんは1つ手にとってぐびぐびとスポーツドリンクを飲む。


「あー、生き返った」

「え…」

「おおきにな絢香ちゃん」

「!」


謙也くんはこんくらいの濃さがベストや!と太陽みたいなきらきらした笑顔をする。その笑顔を見ていると後から続いたらしい財前くんは謙也くんに速いっすわ、などと文句を零してから謙也くんのように1つを手にとってぐびぐびと飲んだ。


「財前、これ絢香ちゃん作ったんやって!」

「…フーン」


美味しくなかったのかな、そんな不安を財前くんは初めて見せた笑みと明日からもこんくらいでお願いしますわという言葉で打ち砕いた。私は初めて財前くんの表情を崩すところを見て少し距離がなくなった気がして嬉しくなった。








×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -