謙也くん、が、私を好き?どうしよう、どうしよう、顔がすごく熱い。私、これからどんな顔で謙也くんと会えばいいの?知ってしまった以上、それを知らんぷりして普通に接するなんて私には出来ないよ。 「あら絢香ちゃんやないの」 「こは、るちゃん」 ぱたぱた、と走っていると不意に声をかけられた。見れば小春ちゃんと、一氏くんも一緒だった。手に飲み物を持っているふたりのことだからきっとお笑いのネタを考えていたんだと思う。そんな小春ちゃんは私の顔を見るなりどないしたん、と心配そうな顔をした。 「え、えっと、あの、」 「謙也と喧嘩でもしたんかー?」 「こら!ユウくん!」 謙也、という単語にわたしの顔はさらに熱を帯びる。それを見たふたりは目を丸くした。 「絢香ちゃん、謙也くんになんか言われたん?」 「え、ええ、と、あの、」 「…聞かん方がええなら聞かんで」 上手く言葉を紡げない私を気遣って一氏くんが珍しく優しげに言葉をかけてくれた。でも、ふたりには話してもいい気が、した。ユウジくんは当たり冷たかったりするけど根は優しいひとだし、小春ちゃんはきっと恋愛の相談にはアドバイスをくれるはずだし、なによりふたりとも簡単に口外するようなひとじゃないだろう。そう思った私はふたりに相談にのってほしい、とお願いした。 「…で、聞いてもうたと」 「うん」 「謙也は聞かれたこと知らんやろうから大丈夫やとしても、お前は知らんぷりを出来ん、と」 「…うん」 そして先程のことを一通り話すとふたりはうーん、と唸る。 「なあ、絢香ちゃん」 「なに?」 「絢香ちゃんは、謙也くんのことどう思っとるん?」 「え」 不意に問われて、言葉につまった。謙也くんのことは、好きだ。だけど小春ちゃんが聞いているのは好きか嫌いかっていう単純な話じゃないと思う。きっと、その好きが友情から来るのか恋情から来るのか、なんだと思う。 「…絢香ちゃん、謙也くんが他の女の子と手繋いだりハグしたりむっちゃ仲良くしとったら、嫌?」 「………、…ずきずき、する」 「謙也に側に居てほしいか?」 「…避けられたくない、一緒にいたい」 なら答えは出たようなもんやろ、と一氏くんは言った。 「絢香ちゃん、恋って嫉妬と独占欲があんねん。それがほんの少しやとしても」 「………、」 「わかったやろ、お前が謙也に抱いとるそれがなにか」 「…うん」 「ほならあとは絢香ちゃん次第!うちら応援しとるさかい、頑張りや!」 ぽん、と肩を優しく叩いてくれた小春ちゃんの横で一氏くんも笑っていた。そして私の胸にあったわたかまりのようなものはもう、なにもなかった。 「ふたりともほんとにありがとう!」 「おー」 ぱたぱた… 「あとは謙也次第、やな」 「せやね、謙也くんへたれやさかい不安やわぁ」 「まあ、絢香があれなら大丈夫やろ」 「それもそうやね」 |