「……なに、してるの?」 今日は部活がオフで、だから私は渡邊先生と進路相談をしていた。それも無事に終わり、教室の近くに置いていた鞄を取りに戻ると扉のところで白石くんと財前くんがこっそり中を見ていた。 「げ、絢香ちゃん」 「げ、って……。…中に誰か居るの?」 「謙也くんと俺のクラスの女」 「………」 今告白の最中なんすわー、と財前くんはさらりと言った。きっと財前くんのクラスメイトってことは財前くんが謙也くんのところまで連れてきて、その時に白石くんは謙也くんと話してたんだろうけど、だけど2人して覗き見なんて趣味が悪い。大体2人だって告白されるんだから告白の場面なんて見る必要ないだろうに。 「謙也やからあんねん」 「え?」 「どういう断り方するんやろ」 「…2人ともモテるくらいのひとなのに趣味悪いんだね」 「そないなこと言うて絢香ちゃんも気になっとるんやろ」 「、」 確かに、謙也くん優しいから、どういう風に女の子の告白を断るのかなって興味はあるけど、でも同時に知りたくないような気もした。 「お、謙也くん口開いた」 「!、」 「ほら、絢香ちゃん」 「わっ」 白石くんは私の腕を引いて中を見るように促した。恐る恐る見てみると私と同じくらいの背丈で髪をふわふわに巻いた女の子が謙也くんと向かい合っていて、謙也くんは照れてるのか頬を人差し指でちょこっと掻いていた。 「その、堪忍な」 「………、」 「気持ちはほんまに嬉しいねん、けど」 「…忍足先輩、好きな人居るんですよね?」 謙也くんは女の子の問いかけに、静かに頷いてから堪忍な、とまた謝った。謙也くん、好きな子居るんだ…。ずきん、と何故か胸が痛んだけれど私はそれになにも気づかないふりをした。 「あの、間違うてるかもしれないんですけど」 「ん?」 「…マネージャーさん、やないですか?先輩の好きな人」 「………、」 「あ、あの違ったらすみません、」 「…ほ、他の子には内緒にしとってくれへん?」 「え、ほな、」 「まぁ、そういうこっちゃ」 謙也くんの笑った顔が見えた瞬間、私の頭はフリーズした。え、だって、マネージャーって、私、 「………!」 「あ、絢香ちゃん、」 ぱたぱたぱたぱた 「走るのはや、」 「…引き止めたん、間違いやったやろか」 「…さあ?」 |