アスチルベ | ナノ


「…謙也くんは?」


渡邊先生に呼び出されてから、途中で会った小石川くんと一緒に部活に行くとレギュラーの中で謙也くんだけ居なかった。謙也くんと来ていたはずの白石くんに聞いてみると白石くんは気まずそうに目をそらす。


「ちょっと、呼び出されてん」

「先生に?世界史のこと?」

「あー、いや、先生やのうて、な」

「じゃあ誰に?」


白石くんの表情からは言うか言うまいか、そんなふうに迷っているのが伺えた。


「…聞かない方がいいこと?」

「うーん…」

「悩むなら言って」

「…ユウジのクラスの子」

「え?」

「せやから」


白石くんはあまり大きな声で言いたくないのか私に耳貸して、と手招きをする。よく分からないまま待っていると白石くんの口から告白と一言だけ告げられた。


「…え?」

「最近多くなってきてん、絢香ちゃんも感じとるやろ?最近謙也が部活中にどっか行くのが多くなったん」

「い、言われてみれば…」


白石くんの言葉に頷かずには居られなかった。最近休憩の時にスポドリをみんなに渡しに行っても謙也くんがなかなか見つからない。休憩が終わる頃には居るけど、でも最近は練習中も見かけないことが多くなった。大抵誰かと仲良く話したり部室で筋トレしたり、すぐ見つけられるところに居るのに最近は見当たらなくて謙也くんを探すことが多くなった。


「…謙也くんもすごくモテるんだね」

「見た目はあれやけどええ奴やしな」

「そうだよね、謙也くん優しいし面白いしかっこいいもん、」


そう言って納得した私とは逆に白石くんはぽかんと目を丸くした。え、あ、あれ?別に変なこと言ってないはずなんだけど…?


「ど、どうしたの?」

「いや、もう少しかもなぁ思て」

「?」

「こっちの話やから気にせんといて」

「う、うん…」


白石くんはにこりと何事もないように笑ってから、みんなに部活開始を告げる。謙也くんが来たのはそれから10分くらい後のことで、一氏くんたちにお前もやるやんけ、みたいにからかわれてて謙也くんは顔を赤くして照れながらもうっさいわ、なんて怒ってた。


「………?」


そしてそれを見て、私の心がちくちくしたような、そんな気がした。








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