アスチルベ | ナノ


「へぇ、自分同い年やったんかー」

「え、えっと、うん」

「そない固くならんでええって!別に取って食うつもりなんやないんやから」

「う、うん」


今日は練習試合でその相手は近くの中学校らしい。全国大会までは行けないけど、分類的には上。そのくらいの強さらしい。白石くんにはいつも通りに仕事しとってや、と言われている。だけどどうやら相手の学校にはマネージャーが居ないみたいだから、何かお手伝い出来ることがあったらしたいと部長さんに聞きにきた。はずなんだけど何故か雑談タイムになっている。私はみんなのドリンクとか、一応やることはやってきたし、数分間休憩だけど次って確か部長さん、ダブルスで謙也くんと財前くんと試合するはずじゃなかったっけ?


「柏木さんって前の所でもマネやっとったん?」

「ううん」

「部活は?」

「何もしてなかったよ」

「ほなまたなんでマネやってん」


心底不思議そうな顔をする部長さんに春休みのことを話すと、顧問の先生ナイスやなぁと白石くんみたいなことを言った。


「うちも柏木さんみたいな子入らへんかなー」

「わ、私みたいな子が入っても良いことないよ!」

「そないに謙虚になる必要あらへんやろ」

「だ、だって…!」

「今日見てる限りやけどよう働いてるし今かて相手のことよう気遣う優しさとかあるやんか」

「え、えっと、」

「それにちっこくてかわええしリアクションおもろいし」

「っか、かわいいなんてありえない!そんなこと言ったら世の中の女の子みんな可愛い人しかいないよ!」


部長さんは予想外だったのか分からないけど私の反応に驚いたみたいで、一瞬目を丸くさせた。けれどすぐにぷっ、と吹き出したかと思ったら腹を抱えて笑いはじめた。私笑われるようなことしてないのに!


「あー、ほんま四天の奴ら羨ましいわ」

「へ?」

「俺も四天に通ってれば良かったわ」

「なんで?」

「やって、俺「絢香!」

「け、謙也くん」

「そろそろ休憩終わるで」


部長さんの話を遮ったのは謙也くんで、何処か苛立っているようにも焦っているようにも見えた。言われてテニスコートを見るとさっきはまばらだったのにいつの間にか部員のみんなが集まっていた。


「…あ、せや白石呼んでたで」

「わ、分かった!じゃあ私、先行くね!」

「おん、頑張ってな」


私はにこにこしている部長さんと未だに苛立っている様子の謙也くんに手を振って白石くんのもとへ急いだ。


『絢香!』

「……あれ?」


そういえば謙也くん、さっき私のこと、名前で呼んでくれたよね?








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