アスチルベ | ナノ


私が泣いている間、謙也くんはずっと大丈夫か?など心配してくれて頭も撫でたりしてくれて涙はなかなか止まらなかったけど、でもものすごい心が暖まった。どうしてなのかな、相手が謙也くんだったから?


「…謙也くん」

「ん?」

「助けてくれて、ありがと」


言うのを忘れていたわけじゃないんだけど、なかなかタイミングが無くて、お礼を言ったのは結局部活に行く頃だった。


「別にええよ、」

「謙也くん、ヒーローみたいだった」

「へ、」

「ヒーローっていうかスーパーマンっていうか」


私は本当にそう見えたから素直に言ったのに謙也くんは顔を真っ赤にしてぶんぶんと首を横に振った。


「おおお俺がひ、ヒーローとかなんかの間違いやって!」

「なんで?最初はちょっと怖かったけど、でもかっこよかったよ?」

「なっ……!」


謙也くんの顔はゆでダコのように真っ赤でこんなに真っ赤な謙也くんは初めてだった。人ってここまで顔が赤くなるんだ、なんて感心したのは秘密。


「あ、せや絢香ちゃん」

「うん?」

「怪我は?」

「大丈夫、謙也くんが助けに来てくれたから」

「そ、そか。なら良かったわ」


へへ、と照れくさそうに笑う謙也くんにつられて私も笑った。いつもより鼓動が少し早いような気がして、いつもより心が安らいだような、そんな気がした。








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