「久し振りだな!」 「せやな、」 と言うわけで、前々から言っていた通り通り財前が遊びにきた。いつものごとく、彼の付き人の姿は見当たらない。きっと後で連絡すると言って一度帰らせたのだろう。いつもそうだから。 「ども、白石サン」 「ども」 「相変わらず一人なんすか」 「せやな、まあ慣れたし大変っちゅーほどでもないで」 「フーン」 俺やったら無理やなあ、と財前はこぼす。ところで俺は財前のことを敬称も無しに呼んでるし敬語も使ってないが、それは俺の仕える彼女と、財前本人が言い出したことであって決して俺が年上だからとかそういうことで勝手に呼び捨てにしたわけではない。勿論彼女に対してそうであったように最初は抵抗があったが財前本人も良いというので従っている。なのに何故か財前は俺に対しては彼なりの敬語(と分類していいのかは定かではないが)を使っている。自分でも思うがその辺はどうにも可笑しい。まあ、彼らが良いのなら俺はそれに従うしかないけれど。 「せや、これ」 「!」 好きやろこれ、と言って彼が出したのは彼女がお気に入りの店の箱。きっと彼女が好きそうなケーキがたくさん入っているのだろう。一瞬にして目を輝かせたお嬢様は満面の笑みで財前に礼を述べた後至極待ちきれないという顔で俺を見た。 「白石っ白石っ」 「今紅茶と出したるから財前と歓談しとって」 「ああ!」 にこにこと心底嬉しそうに顔を綻ばせる。そして俺もまた財前に感謝を述べてキッチンへと向かった。 「そうだ財前!ゲームをしよう!」 「またかい」 「今度はパズルゲームだ!」 「ええけど、お前ゲーム弱いやん」 「パズルゲームはこれでも好きな方だ!格闘ゲームよりは良い戦いが出来るはずだぞ!」 と後ろから楽しそうな声が聞こえてくる。彼女は大体財前が来るとゲームをする。俺ともやらないわけではないが仕事があるため頻繁には相手をすることができない。だから、というわけではないが高確率でゲームをする。本人曰く白石も強いが財前も強いとのこと。まあその肝心のお嬢様は弱いわけではないがかといってすごい強いというわけでもなく、普通より上かなと言うくらいである。まあそんな彼女も得意なものというのはあるわけで。それが今しがた財前に言ったパズルゲームである。4つくっつければ消えるという有名なあのゲームである。 「自分が弱いって自覚あったんやな」 「あれだけ負けておいて自覚がない方が不思議じゃないか」 「それもそうや」 「財前はパズルゲームはするのか?」 「格闘のが好きやけどこういうのもやるで」 「おお!さすが財前だ!」 なにが流石なんや。と思ったのはきっと彼も同じだろう。そうして二人が対戦を始めて少し経った頃に声を掛ける。 「準備できたで」 「む、もう少し待ってくれ」 「これちゃっちゃと終わらせるんでもう少し待っとってください」 「冷めた紅茶出したりせんから大丈夫やで」 どうやらパズルゲームは良い試合になっているらしい。格闘ゲームの時よりも接戦に見える。 「お前こういう系は得意やねんな」 「とうやら格闘より向いているらしい」 「ま、俺が勝つけどな」 「!そうはさせな…って、わ、わわわわわ!」 「ほらな」 そうして勝敗がつき、わなわなと身体を震わせるお嬢様。どうやらこれなら財前に勝てると思っていたらしく、とても悔しいというのが手に取るようにわかる。対する財前はそんな彼女に気休めではないのだろう、連鎖組んどらんかったらほんまに負けてたわ、とため息と共にそうこぼしたのだった。 るるぶ |