Gardenia | ナノ



「ほっ、お、」

「………」

「ぎゃ!」

「………」

「わ、ほっ、よっ、」


ゲーム特有の効果音とお嬢様の声と。いつの間にか広間でゲームをするようになっていた彼女は今日もこうしてRPGゲームに勤しんでいるのだがどうもさっきから間抜けな声だとか狼狽える声だとかそんな声ばかりが耳に入る。基本的に仕事がない時間は自由にしていいとのことだから毒草の本に目を通していたのだがこれではどうも集中できない。否、出来るわけがない。


「お嬢様」

「なんだ、今、ちょ、うわ、」

「もう少し静かにしてほしいねんけど」

「や、でも、これは、仕方ない、だろう!あ、あーっ!」

「いや、どこが仕方ないのか俺にはさっぱりやけど」

「きみはこの難しさを知らないから言えるんだ!見ろ!」

「見とる」

「このタイミング良くボタンを押すということがどれほど難しいか!」

「知らん」

「回数を重ねたらタイミングが変わるなど、邪道だ!」

「なにが邪道でなにが正道なんや」


それがゲームやろ、と呆れた声で投げ掛けてやればそう言うならきみがやれ!と命令されたから彼女の隣に座り、コントローラーを受け取った。どうやら画面にアイコンが表示されたときにボタンを押す、というミニゲームらしい。こういうゲームはたしなむほうではないが、とりあえずやってみることにした。


「………」

「…簡単やったわ」

「きみは存在自体が邪道なのか」

「正道や正道」


眉間にシワを寄せて睨んでくるのは言うまでもないが、俺が彼女が悪戦苦闘しているそれを簡単にクリアしてしまったからなのだ。


「もし万が一仮にきみが正しいのならわたしが邪道になってしまう」

「このゲームってそんな大層なもんやっけ」

「確かにわたしは吸血鬼だけどだけどきみよりも真っ当な………生活もしてなかったな」

「せやな」

「それならばやはりわたしは邪道か」

「いや、せやからミニゲーム一つでそこまでなる必要あるんかって」

「邪道、というよりなんかこうもっと型にはまるような言葉は…うーん……」

「お嬢様ー?」

「……悪!そうかわたしは悪か!悪なのか!」

「いやいやいや」

「む……、ならばなんだ?人外か?確かに人ではないが見た目は人だぞこれでも」

「これでもって言うほど人と断定しにくい外見やないやん普通に女の子やん」


というか彼女が悪とか人でないとか、そういうことではなくてただこういう類いのものが苦手というだけだろう。得手不得手は誰にでもある。その彼女の不得手がこのミニゲームだっただけではないか。その旨を伝えればそれもそうか、と思いの外あっさりと納得してしまった。


「確かにわたしは悪と言われるほど罪を犯しているわけでもないし何をもって邪道とするかも人それぞれ違うんだしな」

「人外は認めるんや」

「それくらいは自覚もしている」


今更そんなことがどうこうと言うつもりも言われるつもりもないのだろう。俺も今更言うことはないけど。





人のを成した








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