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「クーちゃんクビになったん?」


と帰宅早々友香里に言われたものの拒めず、かといってなんとなく頷けず。だけど黙っていたらそれこそ肯定になる。クビになったのには変わりないがまだ認めたくないという心は苦し紛れに休みをもらったのだと言い逃れた。そうして2週間。俺はオサムちゃんを訪ねていた。


「久し振りやなぁ、白石ぃ」

「おん」

「…話は聞いとるで」

「………」

「どうせあいつのことが気になって聞きに来たんやろ?」


久し振りに会ったのにオサムちゃんはなにひとつ変わっていなかった。まだまだ俺の母校で教師として過ごしているらしい。


「あっちに帰っとるで」

「は?」

「やからあの家は一時的に空き家や」


さらりと言い放たれたそれに、俺は動揺を隠せなかった。じゃあなんで俺を解雇したのだ。一時的に帰るだけならそんな必要、と言おうとした俺を制してオサムちゃんは話を続けた。


「けど、もう帰って来れへん可能性もある。せやからお前をクビにしたんや」

「!」


決してお前に非があったわけやない。オサムちゃんはそう告げた。それはそれで安心した。と思う。だけどそれよりもあの家に帰れなくなるかもしれないその理由が気がかりで。そして考えた末に辿り着くのはいつの日か彼女から聞いた話。


「わたしは、一応、王族なんだ。もちろんわたしたちの世界でも王族は要。世界の行く末はすべて王族が握っている。王族はその能力値も高く、誰も勝つことはできない」


あの話と、なにか関係しているような気がして。あのあと彼女は確かに王族として振る舞うつもりはないと言っていたけれど。だけど帰ったということは。


「…白石」

「なん」

「ほんまは口止めされとったけど、もう2週間経つし、教えたる」

「なに、を」

「オサムちゃんな、元々吸血鬼ハンターやねん」

「、」

「…て言うても殺したりはせえへんねん。昔はしとったけどな。今はあいつとハンターの中のリーダー格とも言えるやつとが条約をたてて、そんで違反者を止めるためだけにお互いそういう力を使うようにしてんねん」


それからはこうして勉強教えてんねんけどなー。とオサムちゃんは笑いながら言いのけた。だから彼女と知り合いだったのか。なんて今まで不思議に思っていたことの謎が解けたがそれよりもその続きが気になる。それが口止めされていたことなど、あるはずがない。


「そのリーダー格が病気でぶっ倒れてな。ハンターをまとめるやつが今居らん状況やねん」

「そんなん、条約があるんやからお嬢様が帰る意味もないやんか」

「ちゃうねんな。これを機に、て吸血鬼ん中で戦争を企ててるやつらが居るらしいねん」


そして、話が繋がってしまった。


「お嬢様はそれを阻止するために帰ったて言うんか…?」

「せや。知っとるやろ?あいつはまだ幼いけど、能力値はずば抜けてんねん」

「やから、って、」

「大丈夫や、仁王とか強いやつも味方に居るさかい」

「せやけど!!」


白石。ぴしゃり、と俺の言葉は遮られた。オサムちゃんを見ればどこか辛そうで、悲しそうで。


「オサムちゃんも、ほんまは戦わせたくないねん。けど、あっちの世界にヒトは干渉出来ひんのや」


つまり俺は、いや、俺を含めヒトはお嬢様のためになにも出来ない。そういうこと、なのか。













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