「…ああ、それなら今朝白石から受け取った」 ふんふんとティーカップ片手に話すお嬢様はもちろん俺とは話をしてしない。もう片方の手に持つ電話のその向こうの、財前だ。出来立てのチーズケーキをこれまたいっぱいいっぱい頬張り(ワンホールの)8割方をたいらげ、紅茶を一口、二口の飲んだところに電話はかかってきた。そしてなにかを話し込み数十分。俺は残りのチーズケーキをすっかり食べ終え、その皿を片付け終え、正面の席に座っていた。どうやら真面目な話をしているらしい。そういえばドレスを買いに出掛ける前の日にも財前を電話をしていたからその続きなのだろうか。 「、そう、か。分かった、ありがとう」 「………」 「ああ、またな」 そうして電話を切った彼女は一口紅茶を飲んだ。 「今朝俺が渡したやつがどないしたん」 「ん?ああ、あの中にパーティーの招待があって、財前がそれに出席するらしい」 「へえ」 「だからわたしも出席する」 「………」 まあ、ドレスを買ったのだからこういう日が来るのは当たり前だったのだが。いざやって来るとなんともいえない気持ちになる。やっと外と交流をするようになるのだと言う嬉しさの反面でこれから忙しくなり今までのように穏やかな時間を過ごすことが減るのだと寂しさもある。自分の主にとって大きな一歩でとても喜ばしく思う気持ちもあるのに、マイナスな気持ちも確かに俺のなかにはある。どうしてなのだろう。 「知り合いは多い方が助かるからな」 「知り合い、て財前だけやん」 「なにより白石が居るから安心だ」 「は?」 出てきた言葉に思わずすっとんきょうな声を出してしまった。俺が居る?このお嬢様はなにを言ってるんだろうか。 「は?って……白石も出るんだぞ」 「いや、今朝渡したやつどれも連名やなかったやん」 「そうだな」 「それって俺は招待されとらんのも同然やん」 「いいから白石も出席しろ」 「けど、」 「白石が出席するから、わたしも出席するんだ」 「、」 「だから絶対、出席しろ」 果たしてこの言葉にどんな意味があるのだろう。あれは、と言っても一体どれだったのか分からないがそれでも今朝渡した封筒は全てお嬢様にだけ宛てられたもので、当然招待されたのも彼女だけで。つまり俺は招待されていないのだから外で待つのが普通ではなかろうか。なのに絶対出席しろ、とは一体。だけど俺が出席しなければ出席しないと言うのだから結局のところ俺には拒否権などないのだった。 「ところで白石」 「なん」 「なんできみがチーズケーキ食べてたんだ」 「電話しとったやん」 「なんできみが2割も食べたんだ」 「電話の最中に食うのはあかんやろ」 「いつも1割しか食べてないのに」 「俺は1割以上食べたらあかんのかい」 テレパシークイズ |