Gardenia | ナノ



もぐもぐ。とまるで小動物かのようにスイーツを頬張るのは他でもない俺の仕えるお嬢様である。


「ひやいひ」

「なん」

「ひゃえお」

「食べとるわ」

「………」

「大体そないに頬張って、ちゃんと味わっとる?」

「………」

「もう少しペース落とし」

「……ん」


少し不満げに頷くお嬢様。今日はお嬢様にとって絶好の天気(つまり太陽が顔を出してない)。だから先日話した召し物を買いにきた。俺もお嬢様のドレスを購入後にスーツを一着新調して、気がつけば昼下がり。どこかで昼食をとらねばと歩いているとお嬢様が食いついたのだ。バイキングに。そして洋食のバイキングを楽しみお互いデザートに差し掛かり、冒頭に至る。滅多にない食事だからかやたらと頬張るお嬢様は見ていて楽しいが、彼女の身分を考えるとあまり見過ごせないし、というかそもそもそんなに時間がキツキツというわけでもないのだからと俺はそれを制止したのだ。あと周囲の客が彼女の頬張り具合に驚いていたから少し恥ずかしかったり。


「にしてもドレス決めるの早かったやんな」

「直感だ」

「へえ」

「白石こそよくわたしの服のサイズ知ってたな」

「そら家事やっとるわけやし」

「わたしでさえも知らなかったのに」

「………」

「まあ全部白石が調達してくれてるもんな」

「下着くらいは自分で買えや」

「ノーブラの方が育つんだぞ」

「そんな話がしたいんやない」


カカカッと笑うお嬢様は本当になにもしない。いや、女の従者が居るならそれでいいのだが如何せん従者は俺一人だ。つまりどうしたって俺がお嬢様の下着も買わなければならないわけで(もちろん店頭に行くのは気が引けるからお嬢様の名前で通販を頼んでいるがそれもそれで恥ずかしいものがある)。というのはどうでもいいのだ。今現在彼女がノーブラだろうとなんだろうと俺は自分の主に発情したりしない。ましてや中学生、それも吸血鬼になど。どこの少女漫画だ。…ああでもあれは高校生か。しかも主人公は鬼は鬼でも血を吸わない鬼だ。………まあいい。


「ついでやから聞くけどサイズちゃんと合っとんの?」

「白石って本当はわたしが寝てるときにスリーサイズ計ってるんじゃないかと疑うほどに問題ない」

「誰がするかアホ」

「されてたら今頃白石はニートだろうしな」

「ならお嬢様はこういうふうに外出せんで完全なニートやろな」

「失礼な」


仕事はあるだろ、とズレたところにつっこむお嬢様はいつの間にかテーブル一杯に乗っていたスイーツをたいらげたようで時間を確認した後にまた人混みへと消えていった。


「…こういう人混みには別になんとも思わんのやな」












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