「白石」 いつものように掃除をしていると不意に呼ばれた。最近地毛の方が長くなってきて、そろそろ切るのだろうか。などと考えたがそれは見当違いだったらしい。 「平日で次に曇りになったら、出掛けたい」 出掛ける日なんて曇り以外ないのに。ましてや人混みに慣れてないんだから休日なわけないのに今更改めて言う必要がどこにあったんだろうか、と心の中でつっこんで、そして気づいた。 「………珍しいやん」 「………」 買い物にいくのが、ではない(かといって未だに買い物に行く頻度は低いけど)。お嬢様が手に持っている封筒。差出人はお嬢様から土地を借りているどこかの金持ち。一応、というべきか連名で俺の名前が書かれている。 「月に一度くらいは、参加しようかな、と思うんだ」 それはほんの少し、先日訪問してきた彼の言葉を受けてなのだろうか。とそう思ったら黒いなにかが自分の中で渦巻いた。 「それで、服を、調達したい、ん、だ」 「衣類ですらいつも俺に任せとるのに」 「………」 「仁王に言われたこと、気にしてるん?」 「…白石は、わたしとずっと一緒だから何もかも把握している。だけど雅治たちのように、何も知らない者から見れば、わたしはただの引きこもりに見えてるんだって痛感した」 晴れない表情で、だけどはっきり彼女は言った。 「だからわたしは第三者からも見えるように行動しないといけない」 白石が庇ってくれたことを、無下にしたくない。とお嬢様は強く言った。 そう言われては、協力しないわけにはいかない。なんて元々断るつもりもないのだが。ただ、より強く思った。この少女の従者であり続けたい、と。 「俺も新しいスーツ調達しよかな」 「!」 「パーティ用に一着、な」 笑いながら言えば、彼女もまた微笑んだ。 地球儀の回し方 |