「結局こういうことになるのか」 はぁ、と彼女はため息をついた。というのも彼女の前には俗にいう願書があった。 「オサムちゃんの指示やねんから、こればっかりはしゃあないやろ」 「それはそうだが」 ううむ、と唸るお嬢様。今日も太陽は顔を覗かせて紅い世界をきらきら輝かせている。そんな秋の日も昼。それは先日届いた封筒が始まりだった。 「お嬢様、オサムちゃんから」 「なんだ?」 「高校について、やと」 「は」 「オサムちゃん的にはここが一番オススメやから願書とパンフ入れとくで〜、やって」 「………」 「どうせお嬢のことやから志望校なんてあらへんやろ?今から探してもええけどまあとりあえず願書書くだけ書いとき?、やと」 そう、オサムちゃんはとある高校(っていうても金持ちが行くセレブ校やけどな)の学校案内のパンフレットと願書をご丁寧に寄越してくれたのだ。もちろん俺としてはありがたいものだ。オサムちゃんは教師をしているわけだし、吸血鬼の知り合いも多いらしいから多分安心して行かせられるとこなのだろう。パンフレットを見てもやはり安心出来そうなとこで、お嬢様も良い反応を見せたから願書を書くように促した。のだけどどうも渋ってる。よく分からないが、とりあえず書くように促す。 「なんで書かへんねん」 「こういうのは初めてだから変に手が震える」 「は」 「文字が震えては恥ずかしいからどうしようか考えてる」 「え、お嬢様」 「………」 顔をほんのり赤く染めながらそう言った彼女はだんまりを決めてしまった。というか、そんなことで書くの躊躇ってたとか可愛らしい。いつも大切な書類だろうが適当にサインしてるくせに。 「いつもみたいに書けばええやろ」 「あれとは別だ」 「………」 「ど、どうすれば落ち着くんだ…」 本気で悩み始めてしまったお嬢様。これでは進まない。仕方がないから先にティータイムにしよう。それで落ち着かせるしかない。 きみらしくないなあ |