「ほな、またな」 そう言って財前はお嬢様の頭に軽く手を乗せて帰っていった。 「白石」 それから幾日か経っていた。 「ん?」 特に大したイベントもなく、ただただ変わらない毎日を過ごしている。そして彼女はリベンジを果たそうと誓ったのかなんなのか、財前とやった例のパズルゲームを頻繁にやるようになった。今も彼女はそれに夢中で、俺はその様子を横目に読書をしていたのだが。 「………」 「………」 「………」 「どないしてん」 そんなに言いにくいことなのか、俺の居る位置からはその表情がうかがえないがどうやら言うのを躊躇っているらしい。沈黙が少しの間続いた。 「あの、な」 「おん」 「白石は、その、」 「なん」 「女子高校生も、許容範囲なのか…?」 「………は、?」 それは、つまり、どういうことなのか。いや、分かることには分かる。彼女のいう許容範囲とはつまり恋愛においてのことなのだろう。じゃなきゃわざわざ女子高校生なんて言うわけがない。いや、そんなことは今はいい。問題はなんでそんなことを聞いてきたかということなのだ。 「なんでまた、」 「答えろ」 「、」 「…答えてくれ」 「お嬢、様…?」 「………」 一体なにを考えているのだ、この少女は。だけど答えない限り、きっと分からないのだろう。そしてどうしてそんなことを言うのかも、教えてくれないのだろう。となれば俺は答えるしかなかった。 「…俺はお嬢様より優先する女の子なんて居らんし、要らん」 「!、」 「欲しいとも思わん」 「そう、か…」 バッ、と勢いよく振り向いた彼女は俺の言葉を聞くなり安堵の表情を浮かべた。もしかして…と質問の理由を想像してみるが敢えてその予想は言わずに理由を促してみた。 「え、っと…」 「ん?」 「…前に、わたしが高校に行くようになったら送り迎えもするという話をしたじゃないか」 「せやな」 「白石は、その、外見には非がないし人格だってひとに好印象を与えるものじゃないか」 「………」 「だからきっと、モテる、のだろう…?もし、もしその中の誰かに白石が恋心を抱いたら、と思うと不安になったんだ」 「離れるんやないか、って?」 「…うん」 分かってはいたが、どうしてこの子はこんなに可愛らしいのだろうか。と思っていたら無意識のうちにその頭を撫でていた。 「し、白石…?」 「お嬢様も普通に女の子やなー」 「き、きみはわたしを馬鹿にしているのか…! 」 そして誤魔化しのつもりで言った言葉に、お嬢様は牙を向いた。 愛に至る病 |