「………」 「………」 どうしよう、何を話せば良いのか分からない。小春が去ってから数分。ユウジはあたしに向き合うように座ってあたしも一回お弁当を片付けた。ただユウジもあたしも言葉を発することはなくてただただ沈黙が続いた。 「……なぁ」 「な、なに?」 「体調、ほんまに大丈夫なん?」 ユウジは心配そうに眉を寄せて聞いてくる。朝の様子見てれば分かるだろうに。そう思いつつ頷いて肯定すると無茶しとるやないんかと思ったと言われた。そういえば昨日うちに来てくれたけど、あれはお見舞いだったんだろうか。 「…ユウジ、昨日うちに来てたんでしょ?」 「、」 「わざわざ来てくれたのに、その、寝ててごめんね」 「…別に。無茶してへんか気になったから行っただけやし」 「え…?」 「お前んちの母さん働いとるって言うとったし、もし1人やったら無茶しかねないやろ」 「もしかして、それが、心配で…」 「…悪いか阿呆」 ふいっ、とそっぽを向いたユウジの耳が赤いのを見て、照れてるんだと思うとなんだか嬉しかった。 「お前寝とったし病人起こすわけにいかへんし、お前の母さん居ったからすぐ帰ったけど」 「…ありがとう」 「っちゅうか」 お前が熱あったなんや白石に言われるまで知らんかったんやけど、とユウジが少し拗ねて言うからなんだか遠回しにちゃんと連絡しろと言われた気がして、ごめんと思わず謝った。そしたら俺の台詞や、とユウジが呟いた。 「お前に隠しとることあるし」 「、」 ユウジはあたしの目を見据えて言う。 「噂になっとる他校の女やけど、」 「………、」 「あれ、浮気相手とかやないから。ただの従妹」 「………へ?」 浮気相手じゃないと知って安心したと同時に従妹というキーワードに間抜けな声を出してしまった。どうやらユウジが話すにはその従妹は人にくっつくのが好きで、ユウジにくっついてたのもユウジが小春にべたべたしてるのと同じ感覚でやってたみたいで。あたしはそれを聞いて悩んでた時間はいったい何なんだろうと思った。 「…じゃあ、最近告白に応じるようになったのは、」 「あれは、お前のこと嵌めようとしとったやつ」 「嵌め…?」 「つまり俺とお前を別れさせようとしとった奴らや」 ってことはユウジはあたしと別れたくない、ってそう思ってくれてるってことなんだよね…? 「あれ?じゃあ昨日も?」 「昨日はただ捕まっただけや」 「でも、よく考えたら昨日あの子に彼女のこと好きか聞かれて答えてなかったよね…?」 「、」 ユウジは目をそらす。もしかして本当はあたしのこと好きじゃない、とか…?ま、待ってあたしそんなの嫌なんだけど…! 「…昨日はお前が居たの分かっとったから恥ずかしかった、だけや」 「え…」 「他の奴の時はちゃんと好きやって言うたし」 「う、嘘…」 「嘘ちゃうわボケ。…昨日、もし好きやって言うてもお前が俺のことなんとも思って無かったらって考えて嫌やってん」 「………、」 「デート、とかやって何回も誘おうと思ったけど、小春小春って逃げてたさかい今さら誘うの恐かっただけやねん」 なんだ、あたし、ちゃんとユウジに想われてたんだ。良かった、と胸を撫で下ろした。…ってユウジ今なんて言った? 「逃げてた、ってなに?」 「………、」 「嘘吐いてたってこと?」 「いや、全部やない、けど」 「そういう時もあったの?」 「…少しだけ」 「なんで?」 気まずそうに目をそらすユウジの顔を覗き込んで聞くとユウジは真っ赤になってこう言った。 「…好きな奴と2人きりとか、き、緊張するやろが……!」 つまらん理由で悪いな!とでも言いたげな顔をするユウジ。そんなユウジも愛しく思えて、あたしはユウジのことがすごく好きだと改めて感じた。 少年と少女 「ユウジ」 「なん、」 「大好きだよ」 一瞬目を見開いたユウジだけど、俺も好きとぼそりと呟いてくれて、好きって言葉がユウジの口から聞けてあたしは思わずユウジに抱きついた。 |