「愛理、今日は用事あるん?」 「小春に相談する…から」 「、」 昼休み、いつも蔵と謙也と一緒にご飯を食べるんだけど朝、小春に相談があるって話したらちょうどユウジが用事で今日は別々だからと一緒にご飯を食べてもらうことになった。それを蔵と謙也は察したのか分からないけどいってらっしゃいと言ってあたしもいってきます、なんて笑って返す。小春のクラスに行くと天気がええから屋上で食べようと言われて頷いた。屋上には誰も居なくて(給水塔の陰とかで光か千歳が寝てそうだけど)フェンスに寄りかかってお弁当を広げた。 「で、どないしたん?」 「……えっと…、」 「…愛理ちゃん、昨日ユウくんとなんかあったんやろ?」 「え」 「昨日のユウくん、見たことないくらいテンション低かったんやで」 「そんなに?」 「ダブルスやったんやけどね、ネタをやらへんどころかもう心此処にあらずって感じでストレート負け。光ちゃんも目に見えるくらい呆然としとったわ」 ユウくんがあないになるなんや愛理ちゃん以外に考えられへんのよ、小春は困ったように話した。光がそんなに呆然とするなんてあたしの予想出来ないくらいにユウジのテンションが低かった、って証拠だよね。だってあたしが知ってるテンションの低いユウジはそこまでならないはずだったもん。 「せやけど何かあったのか聞いてみても黙り続けてようやく発した言葉が死にたい、やで」 「し…!?」 「あの死なすどって五月蝿いユウくんが死にたいって消え入りそうな声で言うたんやから」 近くに居た蔵リンもぽかーんとしてラケット落としたんやで!なんて聞いたら相当なことだと思った。蔵でさえそこまで驚くって、そうなるほどあの時のことを考えて考えて考えて、悩んでくれたんだよね。 「愛理ちゃん」 「なに…?」 「愛理ちゃんもまだユウくんのこと好き?」 「好き。…好きじゃなきゃユウジのこと相談しないし」 「それもそうやね、」 小春は穏やかな笑みをうかべた。それから昨日の光みたいにユウジと一度ゆっくり話してみてほしいとそう言った。 少年と少女 その後すぐに小春は静かに、はっきりと告げた。 「聞き耳立てへんでそろそろこっち来たらどうなん?」 「え?」 何を言いだすの、言葉が出かかった時にがちゃりと扉が開く。そこに居たのはユウジで、気まずそうな顔で目を反らした。 「………、」 「どないしたん?用事あったんちゃうの?」 「さっき、終わった」 ユウジは邪魔してスマン、と戻ろうとする。その表情が哀しそうで、胸がきゅうと苦しくなった。 「ユウくんやのうてワテが邪魔者やろ?」 「、」 「愛理ちゃん、相談はまた今度でええかしら」 「あ…、」 これを逃したらいけない、そんな気がして思わず頷いた。小春はきっと次は違う相談やろうけどね、そんな風に言って去っていった。 |