ぴんぽーん あれから時は流れて高校生活最後の春休み。大学受験も終わったし忙しさが軽減した俺たちは財前たちと都合を合わせて集まることになった。場所は愛理の家で、テニス部が集まるのはきっとこれで最後や、と思う。 「ユウジが一番乗りー!」 まだ寒いから早く入ってと家に入れられる。この家に居るのもあと少しになるんやな。新しい環境への期待と、今までの環境が消えることの寂しさが俺の中でぐちゃぐちゃに混ざった。みんな大阪には居ったけどやっぱりばらばらになった。俺は愛理と一緒の高校で(今年は金ちゃんも一緒になった)テニスをやってたから白石たちと大会とかで顔を合わせることもあった。けどそれも終わりや。他の奴らだってテニスから離れる。謙也は親の後継ぐために医大やし白石も理系とかそういう点では謙也と近いけど薬学部やし、千歳は詳しくは聞いとらんけど地元に帰る言うとったし、財前と遠山はまだこの土地で高校生活を過ごすし、師範や小石川は………。ってそう考えていったらみんな、ばらばらに離れるんや。せやから将来、こうやって集まる時があってもみんなその時には社会人で、もっと大人で。学生、っちゅう肩書きを持つ俺らが集まるのはきっと最後や。 「あ、みんなも来た!」 「おー」 「お邪魔しまーす」 「一氏先輩もう居るし」 「お前らが遅いだけやろ阿呆」 「とか言って照れてるじゃん」 「、お前はうっさいわボケ」 「えー」 愛理が料理を用意するのを手伝っとるとインターホンが鳴って全員揃った。白石によればオサムちゃんも後でやけど来れそうらしい。とりあえずそれぞれ荷物を置いてテーブルを囲んだ。愛理の料理を食べながらそれぞれの高校生活を振り返ったり将来やりたいことを話したり、遠山なんかはまだそういうことに詳しくないから白石が分かりやすいように説明したりしとって、色々な話をした。時折テレビなんかも着けてこの芸人はおもろいとか、こいつはまだまだやとか、そんな話もした。 ぴんぽーん 「お、オサムちゃん来たん?」 「えっと…、あ、オサムちゃんだ!」 愛理は待ってて!とオサムちゃんを迎えに行く。すぐに愛理とオサムちゃんの明るい声がして、オサムちゃんがリビングに来た。久し振りに見るけど全然変わっとらんくて、俺らだけが成長したような不思議な気分になった。そんな若いオサムちゃんの隣に愛理は居らんくて、同じことを思ったらしい金ちゃんが聞けば愛理は自室に向かったらしい。俺は愛理が何をするのか予想がついて、せやけど愛理はサプライズだからと言っとったのを思い出して、オサムちゃんたちに愛理が戻ってくるまで話をしようと言ってリビングでいろんな話をした。しばらくすると愛理が戻ってきて、手には俺の予想通りカメラ。 「愛理、なんなんそのカメラ」 「みんな揃ったから写真撮ろう!」 「え?」 「今撮るとね?」 「うん、今!」 愛理は言うが早いか邪魔なもんを避けるなりそこに集まってと指を差した。言われた通りにみんなが集まっとるうちにてきぱきとカメラをセットし、カウントダウンを始めて俺の隣に並んだ。 「さん、」 「に、」 「いち、」 愛理が小さくゼロと呟いてすぐにフラッシュ。愛理はすぐにカメラを確認するとまた自室に向かった。 「嵐のように戻っていきよったな」 「一氏先輩、なんなんすかあれ」 「は?」 「もしかしてユウジ、知っとるんちゃうん?」 「なや、お前らまだ続いとったんか」 「頼むからオサムちゃん空気読んでや」 「ハッハー!そらすまんなぁ!」 知らん知らんとほんまに分からんフリをしたら信じたのかそうやないのかフーン、と返された(ほんま財前のやつ生意気や)。それからまたテニスとかの話をして、今度はゲームして遊んでたら愛理が四角いもんを抱えて降りてきた。 「今度はなんなん?」 「みんなにプレゼント!」 その言葉にゲームしとった謙也らもテーブルんとこで話しとった白石らもプレゼント?と首を傾げた。愛理はうん!と満面の笑みで返しながら1人1人に手渡す。俺にも渡された。 「中身はこれ!」 「今の写真と…、中3の写真?」 「みんなでテニスやってたんだ、って形に残したくて作ったの。このフレームっていうのかな、これ手作りだからちゃんと大切にしてね!」 愛理はそう笑っていった。 少年と少女 それからみんな楽しく遊んだりして、気付いたら解散の時間やった。 「離れるの寂しいけど…、みんなまた集まろうね!」 「愛理先輩は一氏先輩と一緒やから大して寂しくなさそうなんすけど」 「お前ら何処までバカップルやねん!」 「いや、だって、大学たまたま近くて、」 「同棲とかほぼ結婚したようなもんやんか」 「おま、オサムちゃんより早く結婚するとかずるいでぇ!」 「オサムちゃんは遅いの!」 「オサムちゃんも負けんと早よええねぇちゃん見つけなあかんやん!」 「金ちゃんすごかこつ言うばいね」 最後まで賑やかさが絶えなくて、その分みんなが帰ったあとの静けさが寂しく感じた。けど、卒業式とかよりは全然寂しく無かった。何年後かはきっとこうしてまた会えるやろうし、何より来月からは新しい環境で愛理とスタートを切るから。 |