「琴音、ワイ自信あらへん」 全国大会は結局2位で終わってしもた。立海っちゅうんは王者とか言われるだけあって有名なやつやなくても強かった。財前までいく前にダブルスとシングルス3と、立海に勝たれてしもて、そこでワイらの負けが決まった。優勝出来んかったのはやっぱ辛かった。財前もいつものように振る舞ってみせたけど目に涙が溜まってた。ワイも泣かへんかったけど悔しくてしゃあなかった。けど過ぎてしまったもんはもうどうにもならんくて、それは財前たちの引退も同じやった。そんで白石から財前へ渡された部長っちゅうバトンは今度はワイに渡された。副部長は健坊みたいにしっかりした真面目なやつやけどでもリーダーシップを取るのはワイや。ワイには無理やと思う。白石も財前もちゃんとみんなんこと見て指示しとったけどワイにそんなん出来ひん。財前は最初は大変やけど慣れたら大丈夫や、そう言ってくれた。せやかてそんなん言われても不安なもんは不安なんや。 「琴音は、ワイに部長が出来ると思う?」 返事が返ってくるわけあらへんのに、ワイは琴音に聞いた。 「やってワイ、いらちやし勝手なことばっかりしてまう」 「そらテニスは誰にも負けへん自信はあるで」 「やけど…」 そのとき、ワイの口は開いたままになってもうた。不安で握り締めた琴音の手。それがほんの少し、ほんの少しやけど握り返された気がしたんや。 「…琴音……?」 自分で驚くくらい声が震えた。でも聞いてみても、琴音からの返事はない。もしかして、ワイがちゃんとせぇへんかったから、勇気出せって、ちゃんとせぇって言いたかったんやろか。ほんまはどうなんか分からんけど、せやけどよく考えたら琴音も起きたくて、なんか頑張ってるかもしれん。 「…琴音」 「ワイ、やっぱ自信あらへん」 「………」 「けど、琴音も起きようって頑張っとるんやったら」 「ワイも頑張ってみる」 幼い赤と眠り姫 「一緒に頑張ろうな」 ワイは琴音に笑いかけた。 「ワイ、琴音に負けへんくらい頑張るからな」 |