「あら、金太郎くん」 「、」 今日は短縮授業で部活も無かったからワイは駆け足で琴音の病室に行く。今日はいつもよりぎょうさん居れる。1秒でも長く琴音と居りたい。琴音が寝たままでも一緒に居れるんやったら今はそれで十分やった。やから駆け足で病室に行ったんやけど、ちょうど琴音のおかんが病室から出てきた。 「こ、こんにちは」 「今日は早いのね」 「短縮授業で、いつもより早よ学校終わって、」 「そう。じゃあ今日はいつもより長く居れるのね」 ワイが頷くと琴音のおかんはありがとうって笑った。 「きっとあの子も喜んでるわ」 「え」 「あの子ね、テニス部の話するとほとんどが金太郎くんのことばかりなのよ」 「………、」 「金太郎くんが来る前は毎日みんなのことを同じくらい話してたのに」 きっと金太郎くんのことが一番好きなのね、琴音のおかんはそれが昨日の出来事のように楽しそうに話した。 「…ワイも」 「?」 「琴音が一番大切や」 「、」 「やないときっと途中で怠けてまう」 どう言えばええのかよう分からんかったけど、それだけで琴音のおかんは分かってくれたみたいで、またありがとうって言うて、金太郎くんが居てくれて良かったって琴音と同じ笑顔で言った。 「琴音、」 琴音のおかんは用事があるからってすぐに帰ってしもた。その時に目に涙が溜まってたのが見えて、ああ、琴音のおかんもワイと同じで誰にも見られへんとこで泣いてるんやって思った。ワイもやけど、みんな悲しくても琴音の前では泣かへんのやと思う。やって琴音の前で泣いたら琴音が余計悲しくなってまうから。一番辛いのは琴音のはずやからワイらがしっかりせなあかんねん。 「今日な、短縮授業でいつもより早く終わってん」 「せやからいつもよりぎょうさん居れんねんで」 「やから今日は琴音にしたことないようなのぎょうさん話たるな」 幼い赤と眠り姫 「そういえば」 「琴音っておかん似やってんな」 「来る前に会ったんやけどな」 「笑った顔がめっちゃ似ててん」 「一瞬琴音かと思ってもうた」 「姉妹って言うても違和感無いで」 話しとるとき、琴音がほんの少し笑った。そんな気がした。 |