幼い赤と眠り姫 | ナノ



「琴音、」


琴音が植物人間になって、1ヶ月。琴音は1ヶ月経っても起きへんままやった。でもワイも飽きずにちゃんと毎日琴音のとこに来てる。最初は部活をさぼって来とったけど、それはあかんって琴音が言っとる気がしたから部活に出てから来るようにした。もう夏休みも近くなってきて、全国大会も近いらしゅうて、その話で今日はちょお遅くなってしもたけど、いつもと変わらず謙也のおとんが院長のこの病院に来て看護士のねーちゃんに頼んで、面会時間はちょお過ぎてまうけど、いつもと同じだけ一緒に居させてもろた。いつもワイに挨拶とかしてくれる看護士のねーちゃんは琴音とも何回か話したことがあるらしゅうて、琴音が植物人間になったときはワイたちと同じ気持ちやったって言うてくれた。やからか分からへんけど、ワイが琴音に今日あったことを話すからって言うたら面会時間が過ぎても話し終わるまで一緒に居てええよ、っていつも許してくれる。ほんまは時間過ぎたらあかんのに、ねーちゃんも、それを怒らない
謙也のおとんとかも、みんな優しい。白石かていつもやったら毒手使てでも止めるのに、琴音
が関わるからなんやろか、周りに迷惑がかからんように静かにするんやでって言っただけやった。琴音、きっとみんな琴音が大切なんやろな。


「琴音、今日は遅くなって堪忍な」


琴音とワイしか居らん病室。話し掛けてもやっぱり琴音の声は聞こえへんかった。


「あんな、この前大会あったって言うたやんか」

「そんでな、夏休み入ったら全国大会やねんて」

「その話しとったら遅くなってもうた」

「なんかな、全国はもっと強いやつ居るんや、って白石が言っててん」

「ワイが全力で戦えるやつ居るやろか」

「早よ全国大会ならへんかな」

「あ、けどな、全国大会って東京でやるんやって」

「…なぁ、」


琴音も来てや。早よ起きて、白石たちと一緒にワイのこと応援してや。


幼いと眠り


「…琴音」

「…もう、1ヶ月なんやで」


琴音が植物人間になってから1ヶ月。あと何ヵ月、何年待てば、琴音は起きてくれるん?なぁ琴音、起きてくれるんやろ?ずっと寝たままなんて、ワイ絶対嫌やで…。


「ちゃんと起きてな、」

「起きへんかったら、」

「寂しくてしゃあないわ」


泣きそうになってしもて、でも琴音の前で泣くなんやしたなかったから、また明日な、って言って病室を出た。ほんまはもう寂しくて寂しくてしゃあないねん。泣いてまうほど、寂しいんやで、琴音。








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