琴音は目に涙を浮かべて、息を切らしとる。派手なジャージの集団の中で、白いワンピースと、それと同じくらい白い肌はとても目立っとった。琴音は深呼吸してから震えた声で話した。 「あたし、頑張ったよ、」 「金ちゃんが笑顔で優勝トロフィー見せてくれるの信じて、頑張ったよ」 「だから、金ちゃん」 「金ちゃんも頑張って」 「次は金ちゃんの番だよ」 「あたし、ちゃんと此処で見てるから」 ね?琴音は笑って、それからその場に座り込んだ。隣に居た白石と謙也とが琴音を支える。 「金ちゃん」 「…なん?」 「琴音に優勝トロフィー見せたりや」 「目覚めた琴音へ最高のプレゼント、贈ってやりや」 白石と謙也が、ちゃんと琴音のこと支えとくから安心してポイント取ってやって笑った。せや、琴音が頑張ったんやから、ワイも頑張らな意味無いやんか。 「琴音、ワイ勝つから!」 「琴音!」 「金ちゃん…、みんな…」 最後まで見てくれとった琴音やったけど3年も動かなかった身体を急に動かしたからか勝負が決まってすぐ医務室みたいなとこに運ばれた。閉会式が終わって白石たちと琴音のとこに駆け付けた。そこには琴音のおかんも居て、話を聞けばなんや会場近くになっていきなり琴音が走りだしたらしゅうてびっくりしたらしい。っちゅうかいきなり走ったら座り込んで当たり前やんな。 「えっと、何から言えばいいのかな…」 「え」 「みんなと会って第一声が金ちゃん、だったから、その…」 琴音は恥ずかしそうに言ったけど、 「琴音」 「うん?」 「お帰り」 まず言うのはこれやんか。 「………、」 「琴音?」 「え、琴音?!」 「どっか痛いん?!」 せやのに琴音は俯いて泣き始めてしもて、ワイはもちろんみんな慌てた。琴音は俯いたままやけど、小さく小さく言うた。 「ただいま…」 それが聞こえた瞬間、みんな安心して琴音の頭を撫でたり小春なんかは背中をさすったりして琴音が落ち着くのを待った。 幼い赤と眠り姫 「良かった」 「うん?」 「みんな、大人っぽくなったけど、全然変わってなかった」 「………、」 「あ、でも一番驚いたのは金ちゃんかな」 「琴音」 「え?」 「俺らも琴音の成長に驚きやねんけど」 「あたしの成長?」 「植物言うても成長するとこは成長するんすね」 「!」 「良い女になったばい」 「良い女?なんやそれ?」 「ききき金ちゃんは知らなくていいの!」 「良い女っちゅうのはな」 「蔵も吹き込まないで!!」 なんやよう分からんけどおもろくて思わず笑った。そしたらみんなもつられて笑って、琴音も笑った。やっぱり琴音が居る方が楽しい。 …琴音、お帰り。 起きてくれて、有難う。 |