dream | ナノ
「………」
「………」
いったいぜんたい彼はどうしたというのだろう。思考回路をひたすらに働かせるものの、やはり分からなかった。だって昨日も普通に、本当にいつもと変わらなく謙也が家まで送ってくれて、その道中も他愛ない話で盛り上がって、別れ際もまた明日って言ってぎゅって謙也が恥ずかしながらも抱き締めてくれてそれで別れて。さっきだって昨日と変わらず謙也がわたしの家まで迎えに来てくれておはようって言って今もいつも通り学校への道を歩いているはず、なんだけど。どうしてか彼は突然黙り混んでしまった。どうして。
「あの、謙也?」
「………」
「謙也、どうしたの?」
「…えっ、あ、ああ、すまん、」
へらっ、と力なく笑う謙也。はて。どうしたものやら。いやどうしたものやらもなにも聞き出す他ないのだけど。
「謙也、なにかあった?」
「っ」
「さっきから元気ないけど」
「…、……」
「わたしなにかしたなら謝るし」
「いや、ユイに原因はあらへんねん、えっと、」
「?」
「…、くだんないことやねん」
「うん」
「うん、やのうて、くだんないことやからユイに言うほどのことでもないねん」
「いいよくだらなくても」
もしかしたらなにか力になれるかもしれないし。と付け足すと謙也は言いにくそうに口をつぐんだ。なんだなんだなんなんだ。
「言いなさい」
「……じ、実はな」
ユイと別れる夢見てな、と謙也はしょんぼりした顔で言った。は?わたしと別れる夢?
「なんで別れてたの」
「なんや、喧嘩みたいなんしてて、」
「なんで?」
「…わからん」
「……それで不安にでもなってたの?」
「…おん」
しゅん、と効果音がつきそうな感じでうなだれる謙也。こいつあほだ。生粋のあほだ。そう思ったわたしは謙也の頬をつねる。
「いだだだだだ」
「その夢見て謙也は不安になったの?」
「そ、そうです、いた、いたいて」
「あほ」
「っ、」
「夢は夢でしょうが」
「け、けど、」
「今わたしたちは付き合ってて喧嘩もしてないし、謙也はどうか知らないけどわたしはこの先も長く謙也と一緒にいたい」
「へ」
「…それでいいでしょ?」
頬から手を離してそう言えば、謙也は満面の笑みで頷いて言い放った。
「おん!俺もずっとユイと一緒がええ!」
そして周りにひとが居るのも忘れてだいすきやで!と大きな声で言う謙也の頭をわたしは叩くのだった。
しゃくりを上げたサイダー
(いった!ユイ今のは痛いて!)(うるさいあほ!おっきい声で言うな!)(ほんならユイは?ユイは俺のこと好きやないの?)(!?)(なあユイ、)(…、…すきだよ)(おおきに)((あれ、上手く丸め込まれたような…))