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私はいつもお昼は友達と教室で食べている。友達の席が窓際だからその友達の前の席の子に借りるねって言う。丁度借りたところは何故か壁になっていて、私はその壁に背を預けて寄り掛かってお昼ご飯を食べているわけだ。この席からは私の好きな謙也くんが見えるわけなんだけど、話し掛けることがなかなか出来ない私はいつも見ることしか出来ない。友達は私が謙也くんを好きなことは知っている。だから私が友達の方を向かないで教室を見渡すような体勢で居てもあまり怒らないで居てくれる。


「あんたいっつも見てるだけだよね」


ふと友達が言った。でもそれはもっともなことで、私はうんとしか言えない。でも良いの、謙也くんはいつも楽しそうに誰かと話ながらお弁当を食べている。何を話してるかはそこまで分からないけど、でもものすごい楽しそうなんだ。私はそれを見るだけで嬉しくなる。


「あ、忍足じゃん」


ある日、友達が飲み物を忘れたからと購買に行った。私も買うものがあるわけではないけどついていった。すると驚きなことにいつもお弁当の謙也くんが購買でパンを買っていた。あ、あれ人気のパンだ。なんて思ったら話し掛けられた。


「今日、弁当忘れてしもたんやけど、なんか食べるもん持ってへん?」

「パン買ったんじゃないの?」


ほらそれ、って謙也くんの持ってるパンを指差すと謙也くんはこれじゃ足りひんねん、って苦笑い。じゃあもっと買えば良かったのにって思ったら謙也くんは今日そないに金持ってへんねん、ってまた苦笑い。何か奢ってあげたいな、なんて思ったけど生憎私のお財布は鞄のなかで眠ってるし、一緒に居る友達はお金がピンチらしいから絶対貸したりなんてしないだろう。ちょっと残念。って思ってると自販機の前の行列に紛れてた友達が戻ってきて戻ろう、って言うから戻る前に謙也くんの方を向いたら謙也くんは謙也くんで友達と話していたからせっかく話せたのに、なんて思いつつも教室に戻った。

それからいつもと変わらず友達と他愛ない話をしながらお昼ご飯を食べていると謙也くんは私が座っている席の前の席に来て座った。今まで一回も此処に座ったことないから思わずびっくりして謙也くんを見るけど謙也くんは近くの人とさっき購買で買ったパンを食べながら楽しく話してる。いつもと違う距離感で私はどきどきした。


「なぁ、おにぎりとか持ってへん?」

「え?」

「やっぱりパンだけじゃ足りひんねん」


すると突然謙也くんがこっちを向いて話し掛けてきたから声が裏返る。謙也くんのお腹はパンだけじゃ満たされなかったみたいで、おにぎりがあるか聞かれた。そういえばあったな、って思ってちょっと待ってて、と謙也くんに言ってから鞄のなかに入ってるおにぎりを謙也くんに渡した。今日は体育があったから要るかなと思って作ったんだった。…あぁそっか、謙也くん今日体育だったから余計にお腹が空くんだ。って思って謙也くんを見たら謙也くんは私に笑顔で言った。


「おおきに!ごっつ美味いわ!」

「ううん、美味しくて良かった」


だから私も笑って返したら謙也くんは頬を赤くしてそっぽ向いた。照れてるの?なんて思って首を傾げたら友達に良かったねって頭を撫でられた。よく分からない私はどういうこと?って聞くと友達はきょとんとしてあんた鈍感ね、なんて言ってきて私はまた首を傾げた。





(アカン、今の可愛過ぎや…)







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