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「ひ、かる」


涙をぼろぼろこぼしながら彼女は俺を見た。カーディガンの袖は此処から見ても分かるくらい涙で濡れとって、なんでこないに泣かせるまで追い詰めてんやろ俺。彼女は普段こないに泣き虫やない、むしろ泣いたことあるん?っていうくらいいつも笑っとって、俺もそんな笑顔が好きやった。付き合い始めたのは半年くらい前。せやけど、ここまで追い詰めてカーディガンの袖がびしょびしょになるまで泣かせたんは今回が初めて。俺の方が悪いのは分かっとる。やって、こいつはいつも部活頑張ってね、とか光がテニスしてるとこが好きだから、とか言うて全然一緒に居らん俺を怒らへんで逆に応援してくれた。思えばそのとき早く思うべきやった。人前でいつも笑っとっても寂しい思いをしとるんやから、一緒に登下校するくらいせな。なんでそのことに気付かへんかったんやろ、俺。


「…堪忍な」

「い、いよ、だって、光に、は、もう、高田ちゃんが、居るじゃん」


高田は女テニで話しやすい奴やから、こいつのこともよう相談しとった。よう考えたら、高田と一緒に帰ったこともあった。高田は彼氏が居るから、なんて甘い考え。こいつは高田とそないに仲良しっちゅうほどの関係やないから、そない事実知るはずあらへんのに。そういえば、高田が言うとった。女の子って結構嫉妬したり、人前で笑ってても影で泣いたりしてるんだよって。もっと早よ行動するべきやった。


「高田は彼氏居るから、そんなんやない」

「…うそ、」

「………」


弱々しく震えた声で否定した。ほんまにどないしよ、別れる気はこいつにはないやろと思うし俺もする気はない。とか思っとったら、あたしのこと嫌いならそう言ってよ、ってまた弱々しく震えた声で言った。そう言う間も涙はぼろぼろほおを伝って零れ落ちてゆく。違う、お前以外に好きな奴なんて居らん。そう言えれば良いのにさっきのように否定されるのを恐れてか俺の口は音を出さない。





なんで俺は伝えれへんのやろ、なんて思ってるうちにも涙は溢れ続けてる。







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