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所詮踏み込めないよの続編





「ユウくんってユイちゃんのことどれくらい知っとるん?っちゅうか逆に自分のことどれくらい教えたん?」

「は?」

「せやから、お互いについてどれくらい知っとるん?」


いきなり小春にそないなこと言われた。唐突に何言い出したかと思えばお互いのことどれくらい知っとるかなんて聞いてどないすんねん。そう言ったらユウくんはあほや、って言われた。は?なんやねん、わけわからへん。


「ユウくんはユイちゃんの誕生日とか誰から聞いとる?」

「そら小春しか居らへん」

「せやったらユイちゃんはユウくんに誕生日とか聞いとる?」

「小春に聞いとるんやないんか」


そう言うたらちゃうで、とため息つかれた。え、ちゃうん?せやけどこの間小春の話しとったら小春ちゃんってみんなの事たくさん知っててすごいよね、って言っとったで。…あれ、それは俺が小春はなんでも知っとるんやで、って言ったからやっけ。せやったらユイが小春に聞いとる証拠はあらへん、それに小春も否定しとる。なら誰に聞いとるんやろ、俺には聞かへんし。白石辺りか?いや、白石が俺のこと全部知っとるわけない。そないなことあったらどん引きや、すぐさま部活辞めるわ。とか考えとるとほんまにユイちゃんのこと好きなん?って好きやなかったら付き合わへんし。


「ユイちゃんがなんでも知っとるわけちゃうねんから、」

「………」

「っちゅうか2人のときも部活のことばかり話しとるん?せやったらもっとユイちゃんの気持ち考えなこれから先も悲しませるばかりやで。ユウくんはツンデレやけどそれを言い訳にして言葉にも態度にも出さへんのは苦痛でしかあらへんわ」


あかん、小春に言われると凹む。そんな俺の心情を察したのか小春は頑張りや、って言うて教室の入り口を示した。そこには珍しくポニーテールしとるユイが居った。普通にかわえぇ…、あかん顔赤くなる。


「あのユウ、ジ…、え、え?」


俺のほうが背が高いから自然と上目遣いで見られる。あれ、こいつこないに可愛かったっけ。いつも以上にえぇ匂いするし。なんの匂いやこれ、シャンプー?髪もめっちゃさらさらやん。撫でたいけど下手したらポニーテールが台無しになりそうやったからぽんぽんと軽く叩いただけやのに大きく目を見開いて顔を赤くする。


「なんやいつも以上にえぇ匂いするんやけど」

「えと、シャンプー変えたからかな、」

「あと食いもんの匂い」

「あ、そ、そうなの!授業でお菓子作ったからユウジにあげたくて来たの!好きなものよく分からないから、砂糖とかはレシピ通り、に、」


話を聞きながらひょいっとユイの手から袋を取ってリボンを解く。中には色も形もプロ並に綺麗なクッキーが入っとって俺はその一枚を口にした。ユイは泣きそうなほど眉を歪めて見とったけどなんでそないに心配すんのかよう分からへん。やってレシピ通りに作ったいうても他の奴が作ったのとは比べものにならないんちゃうかっちゅうくらい美味かったし。美味い、一言だけ言うとユイは更に顔を赤くした。けど眉は下がったままでこいつ不安なんかな、と直感的に思った。好きなものよく分からない言うたし。小春の言葉を思い出して考える。きっと不安やったんや。俺が何も言わへんから何も教えへんかったから、俺の気持ちが確かなんか不安やったんや。


「堪忍」


ユイはなんも悪くなくて、全部俺が悪い思ったから少し頭を下げて謝ったのに聞こえたのはえ?という間抜けな声。


「お前のこと小春に全部聞いとって俺がなんも聞かへんかったから、何も聞けなかったんやろ」

「………」

「気付くの遅かったわ、俺」

「っ、ばか」

「ばかは言うた、ら……」


あかん、と続くはずの言葉はユイの涙を見て止まった。なんで泣いとんねん、謝ったやろ!わけが分からへんけど、泣き止む気配がないもんやからよう分からんままに抱き締めた。


「…俺、全然素直になれへんねん」

「、」

「気持ちと逆んこと言ったりしてまう」

「…う、ん」

「せやけどどんなこと言うてもお前のこと好きなんは変わらへんから」

「!」

「せやから、心配そうな顔すんなや」

「ユウジ、あた、し」

「ん?」

「ユウジのいちば、になれる?ユウジが一番、好きな人に、なれる?」

「…あほ、とっくになっとるわ」


そう言って額にキスをした。





(ユウジ、好き)(、俺かてお前が好きや、一番好きや)(ちゃんと言って、ね。あたし、不安で堪らない、から)(…おん)







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