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「お前、妊娠したってほんま?」


開口一番にそんなことを言われるとは思わなかった。昨日は久々に蔵くんと光くんと一緒に飲んできたらしく、謙ちゃんは帰ってくるなりすぐに寝てしまった。2人が酔い潰れた謙ちゃんを近くまで送ってきてくれたみたいで迷惑かけてばかりだな、なんて思う。大学生になってアパートの一室を借りてあたしは謙ちゃんと2人で暮らしてる。中学からの付き合いだし、そういうことはそれなりにしてるけど、だけど妊娠なんてした覚えはない。っていうかしてない。そんなことを吹き込んだのは間違いなく蔵くんと光くんなんだと思う。


「…2人に言われたの?」

「白石が言うてた」

「…そう、」


蔵くんのことだから理由についても謙ちゃんが信じそうなことを考えて言ったんだろうな。光くんも蔵くんに便乗して適当なこと言ったんだろうな。あの2人はなんやかんや謙ちゃんをからかうからなんとなく考えは想像できる。でも謙ちゃんもそろそろ気付いてくれないかな、あたしは謙ちゃんに隠し事なんてしないから全部嘘だって。そんな鈍感な謙ちゃんはあたしに真顔でほんまなん?って聞いてくる。此処でうん、なんて言いたくないけど、あたしがもし頷いたら謙ちゃんはどうするんだろう。


「もし本当って言ったらどうするの?」

「ど、どうするって、そ、れは、あ、あれやん」


曖昧に返されて驚いたのか、はたまた言うのが恥ずかしいのか、謙ちゃんはあたふたし始めた。あたふたされてもあたしの方が困るんだけどな…。なんて思ってると謙ちゃんはまたあたしを驚かせることを言った。


「…結婚、とか」

「え、?」

「………」

「ほ、本当に?」

「ほんまは、誕生日まで言うの待とうって思ててんねんけど」


ほら、と照れくさそうに小さな箱をあたしに渡す謙ちゃん。その箱が何を意味するのか、言わなくても分かる。でも、夢じゃないんだよね?現実なんだよね?


「妊娠したっちゅうんなら早めに言うた方がえぇやん、か…」

「…謙ちゃん、」

「それに、これからもずっと居りたい、し…」


お前と離れたない、謙ちゃんがそんなことを言うから涙があふれて止まらなくて、頷くのが精一杯だった。


シテイのにね
(でもちゃんと愛があった)



(…謙ちゃん)(ん?)(結婚したらもう騙されないでね)(…は?)(あ、でも子供欲しいならあたし頑張るよ)(え、な、ちょ、おおお前、嘘なら嘘って)(せっかくのプロポーズだもん)(せやかて、勘違いしとったやん俺、)(言ってくれたことが嬉しいから良いの!)







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