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見方によっては近親相姦





「ユイ、それどうしたの」


ふわふわした可愛い抱き枕をその用途通りに抱きながらメールをカコカコ打っていると、双子の兄である精市くんが部屋に入ってくるなり不機嫌さを露骨にして言った。


「もらったんだよー」

「誰に」

「まーくん」

「………」

「ブンちゃんと三人でゲーセン行ったときにとってくれたの」

「この間もゲーセン行ったって言ってなかったっけ?」

「この間は赤也とブンちゃんとジャッカルくんと四人で行ったんだよ」

「その時もなにか貰ってきたよね?」

「その時はこのぬいぐるみ」


ほらこれ、とブンちゃんがゲーセンで取ってくれた某大手メーカーのキャラクターのぬいぐるみを見せれば精市くんは益々その不機嫌さを増した。精市くんが所属する男子テニス部にわたしは臨時マネージャーとして時たま手伝いに行く。そうしてるうちに(いや、まーくんとブンちゃんは同じクラスだから普段から仲良くさせてもらってるのだけど)レギュラーのみんなとは仲良くなった。そうすればもちろん自然とみんなと出掛ける回数は増えていくわけで、ゲーセン以外にも蓮二くんと弦一郎くんと図書館で勉強会をしたり、柳生くんと蓮二くんとひたすら和な所を巡ってみたり、まーくんとダーツ勝負したり、ブンちゃんとジャッカルくんと赤也とでバイキングに行ったりと、みんなが休みの日はひたすら誰かと遊んでる。そしてそういう時にこの抱き枕やぬいぐるみのようになにかを貰うことは日常茶飯事のようなもので。どうしてか精市くんはそれがひどく気に食わないらしい。でもいつもその理由を聞いても返ってくるのは別にユイには関係ないよ、の一点張り。
ふむ、困った。


「ねえ」

「なに」

「なんでそんなにわたしが物を貰うことが気に食わないの」

「誰も気に食わないなんて言ってないよ」

「じゃあその不機嫌な顔はなんなの」

「ユイには関係ないよ」

「…そういうならわたしが物を貰うことだって精市くんには関係ないよ」


真似をするようにそう言えば精市くんは更にむっとする。だってそうじゃない。わたしが誰になにを言われようと誰になにをされようと誰になにを貰おうと、精市くんには関係ない。とそこまで思ったところで少し寂しくなった。精市くんはわたしには関係ないと言ってなにも言わないことがたまにある。それが悲しかった。だからこれはそう、言い訳するなら、ちょっとした仕返しだ。


「関係あるよ」

「ないよ」

「ある」

「ない」

「ある」

「なんで」

「…双子だから」

「は」

「………」


どことなくばつが悪そうな顔をされた。双子だから、って、え、?頭にクエスチョンマークを浮かべていると精市くんはほんの少し照れ臭そうに言った。


「前に、ユイが言っただろ」

「、?」

「俺たちは二人で一人なんだって」


その言葉に、固まった。前に、って相当前のことだし、っていうかそんな幼稚園児の口約束並みの言葉を、精市くんは、


「俺はユイが他の男といちゃつくのが嫌なの」

「っ、」

「シスコンって思われたくなくてずっと言わなかったけど、俺はユイが居ないとだめなんだ」

「せ、いち、くん」


そうして拗ねたように口を尖らせる精市くん。戸惑う。だって精市くんがそんなこと言うなんて想像もしていなかったし、っていうかぶっちゃけ、わたしも似たようなことを思っていた。けど精市くんはそういうの嫌がるかなあ、って心の奥の奥に仕舞い込んでいたのに。


「…ごめん、」

「精市くん」

「………」

「やっぱりわたしたち双子だよ」

「え?」

「だって同じようなこと、わたし思ってたもん」

「……、…え?」


手に持っていた携帯と抱いていた抱き枕をベッドに放って、精市くんにどん、と抱きついた。ぅわっ、と精市くんにしては珍しく狼狽えた間抜けな声が出た。


「えへへへ」

「…なんだ、悩んでたのが馬鹿みたい、っていうか馬鹿だ」

「わたしだって悩んでたからわたしも馬鹿ってこと?」

「そうだね、ユイも俺も馬鹿だ」

「精市くんと一緒ならいいやー」

「あはは」


わらいながらぎゅう、と強く、だけど苦しくない程度に抱き締め返された。


「ね、精市くん」

「んー?」

「おじいちゃんおばあちゃんになっても一緒に居たいね」

「先に死なないでね」

「精市くんこそあの時みたいにはらはらさせないでね」

「ふふ、あの時は毎日泣き腫らしてたもんね」

「精市くんだって元気なかったじゃんか」

「当たり前だろ、あんな状況下で笑う方が無理だ」

「それならわたしだってあんな状況下で泣かない方が無理だよ」


そんな言い合いをして、笑い合った。













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