dream | ナノ



「ハッピーバレンタイン!」


とテーブルいっぱいに広がったラッピングを見て俺を始め部員全員が驚いた。


「え、これどないしたん?」

「いややなぁ、うちの手作りに決まってるやん」

「………」

「全員分やから1人1人の量は少ないかもしれへんけど堪忍してな」


そう言って1人1人に手渡しで小さなラッピングされた袋を渡していくユイ。あいつの料理の腕はえぇ方やと知っているからか他の奴らは嬉しそうに貰う。…おもんないなぁ、って思うのはなんでやろ。


「レギュラーのみんなはちょっとだけやけど量多めやから」


と言ったときにはすでにレギュラー以外はもう練習を始めとって、あっという間に渡し終わったらしい。…あんな多かったんに渡すの早いなこいつ。


「金ちゃんこれで足りる?」

「他の人らもくれたから大丈夫やで!おおきになユイ!」

「それなら安心やね」

「おん!」


小石川、千歳、師範、遠山…と次々に渡していくユイ。遠山なんかもらってすぐに袋開けて美味しそうに頬張っとった。ほんますぐ腹減るんやなこいつ。っちゅうか絶対誰から貰ったか覚えてへんやろ。まぁ俺もユイ以外…、あーちゃうちゃう、だ、誰にも返そうとは思ってへんし。って誰に向かって意地張っとんねん俺。


「はい、ユウジ」

「お、おう」

「…?どないしてん?」

「あ、いや、」


ユイはきょとんとして俺の顔を覗き込む。あかん、俺こないへたれな謙也みたいに顔を覗かれたくらいですぐ顔赤くなるようなキャラやないはずや。そんな慌て気味の俺にさらに追い打ちをかけるかのようにユイは俺の手を掴んで手の平に可愛らしい袋を置いた。


「口に合わへんかったら、堪忍、な…?」

「…は?」

「け、けど、頑張って作ったさかい、」

「んなもん腹ん中に入ったら同じやんか」


ついいつもの流れで素直にならなかった…のが気に食わなかったのか、ユイはほんのり赤く頬を染めて照れていた顔から逆転、眉間に皺を寄せて人がせっかく作ったのにとでも言いそうに顔を歪めてわなわなと震えた。周りを見ると誰もがやってもうたという顔でやれやれとため息を吐く。


「そないなこと言うならユウジにやらん!返せ!」

「はぁ!?なんやそれ!」

「それはうちのセリフやド阿呆!」

「な、」

「ユウジのために小春にユウジはどのくらいの甘さが好きか聞いたり友香里ちゃんや財前のお義姉さんに相談して何を作るか決めたりラッピングはどないなんがえぇか決めて、」

「……、」

「でも本命やからってお菓子作るんからラッピングまで1人で全部して、せ、せやのに、…ぅう、っう」


あかん、嬉しすぎる。まさかユイの本命が俺なんや想像してへんかったし、俺だけこない特別なんて。けれどもそないな俺とは裏腹にユイはぼろぼろと泣き始める。


「あーあ、泣かせた」

「バレンタインに女の子泣かせる奴初めて見たわ」

「な、なんやねん!知らんかったんやからしゃあないやろ!」

「そう言うてもユウくんのだけラッピングちゃうねんから気付いてもえぇやないの」


小春までもがユイに味方してユイを慰める。…まぁ、確かに俺のだけラッピングがちゃうけど。


「あー、もう分かったからさっさと練習行けや!」

「そないなこと言うても不安やなぁ」

「お前らが居る方がなんもできひんわ!」

「やって。練習行ったほうがえぇんちゃいます?」

「せやなぁ、この状況で邪魔するのが一番あかんかもな」

「…ほな、2人とも頑張ってな?」


レギュラーの奴らが練習に出ていく際、最後に出ていった小春は何処か安心したような表情だった。


「…さっさと泣き止めや」

「………、」

「大体な、1人でべらべら喋って泣かれても困んねん」

「…うん」

「ともかくお前が俺のために頑張ってくれたんやっちゅうのは分かった」

「…うん」

「っちゅうか、フられたとか思ってへんよな?」

「…え?」


ユイは目を丸くして俺を見た。そら無理は無いけどな。見てる限り俺はユイのことを特になんとも思ってへん、と感じとるらしいし。


「せやから、俺がお前に恋愛感情を持ってへんて勘違いしてへんかって聞いてんねん」

「な、え、どういう」

「…自分、人の言ったことが理解出来ひんくらい頭悪かったんか」

「し、失礼なやっちゃな!それくらい理解出来るわ!けど、そない都合えぇこと…、」

「いつも誰に何を言われてもえぇように捉えて前向きな奴が何言うとんねん」

「そんなこと言うたかて、えぇように捉えたら、ユウジが、うちのこと…」

「…好きやねんけど、お前んこと」

「え!ほ、ほんまに!?」

「ここで嘘つくような人間ちゃうし」


ユイは実感がわかないらしくぽかーんと口を少し開いて間抜けな顔をしてる。


「…あかん嬉し泣きしそう」

「って言うとるそばから泣いとるし」

「や、これはちゃうねん、これはさっきの名残やねん」

「わけわからん」

「…うちもあんま分からん」


嬉しすぎて何言うたらえぇか分からん、とユイはへにゃっと笑いながら言った。阿呆か、俺かて嬉しすぎてどうすればえぇか分からへんわ。



(チョコが繋いだ答え)


(おめでとさん)(良かったなぁ)(…え)(お、お前ら、)(見ててドキドキしたわぁ)(小春まで…!)(ま、まさか全部見てたの!?)(おん)(やって不安やったし)(うああ、公開処刑や…!)








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