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「ブンちゃん、一体いくつ貰ったの」


目の前の彼はとても幸せそうな顔をしている。それに反してあたしの顔はどんどん不機嫌でムスッとしていく。今日はブンちゃんが唯一腹が減ったと言わない日。何故なら今日はバレンタイン、つまりブンちゃんに思いを寄せる女の子たちがみんなお菓子をあげる日。その証拠にブンちゃんはさっきからばくばくお菓子を食べていてその手は一向に止まらない。


「70くらい?…あ、もしかして妬いてんの?」

「そ、そんなんじゃ、」

「ほら、これやるから機嫌なおせよぃ」

「んっ」


ブンちゃんは楽しそうに笑う。口に入れられたのはチョコチップ入りのクッキーだった。え、これ、手作り?手作りだったらあたし負けた。こんな美味しく作れない…。


「ブンちゃん、……」

「美味いだろぃ?」

「………うん」

「だろぃ!」


満足したとでも言いそうなブンちゃんはそのチョコチップクッキーをあたしに差し出す。…見習えってことなのこれ。渋々受け取るとブンちゃんはまたお菓子の入った袋を開けて美味しそうに頬張る。ブンちゃんはお菓子を食べるとき本当に幸せな顔をする。そんなお菓子になりたい、とふと思った。


「…あたし、お菓子になりたい」

「は?」

「だってお菓子食べる時のブンちゃん幸せそうなんだもん」


ブンちゃんは馬鹿だろ、とあたしに軽くデコピンをした。


「ユイが居るのが前提で、それで食いもんがあるから俺は幸せな顔になんの。そのユイがお菓子になられたら幸せな顔なんて出来やしねぇよ」

「、」

「つーかお菓子とか一度腹ん中に入ったら終わりじゃん。それにもしお前がお菓子になったとして俺じゃなくて違う奴に食われたら俺に会うことも出来ないんだぜ?」

「やだ、ブンちゃんに会えないのは嫌だ」

「だろぃ?なら今のままで良いんだよぃ」


そう言いながらよしよしとあたしの頭を撫でてくれる。あたしは小さく頷いた。



(でもそれ以上に幸せ)


(あ、そのクッキー俺のお手製な)(、え?)(初めて作ったんだけどさ、上手いだろぃ?)(………)(ってあれ?どうした?)(ブンちゃんのが上手…)(俺、ユイのお菓子、好きだぜ?)(…あたしは?)(勿論好きだっての)







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