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「誕生日おめでとう」


今日は俺の誕生日で、テニス部を始め俺のファンだという子や同じクラスの奴らにも声を掛けてもらいおめでとうという言葉と共にプレゼントをたくさん貰った。だけど俺は未だに満足はしていない。祝ってもらったのが嫌だったわけでもプレゼントに不満があったわけでもない。何も渡してこなければ言うことすらしないユイに不満なんだ。去年もその前も必ず祝ってくれて照れ臭いからと花で自分の気持ちを伝えてきていたユイがどうして今年に限って祝いの言葉すらかけてこないのか、こればかりはさすがに分からなかった。分からないのはそれだけじゃない。今日、一回も声を聞いてなければ顔すら見てない。


「ああ、如月なら遅刻じゃと」

「だけど遅刻しますってすぐ電話切られちまって理由はわかんねぇんだってさ」

「そうか、」


ユイと同じクラスの仁王と丸井は来たらすぐに俺のところに行かせると言って、俺はありがとうと一言告げて自分のクラスへ向かった。ユイが遅刻なんて家の手伝いくらいしか無かったのに今日は違うんだろうか。ユイの家は花屋で結構名が知れている少し大きめのお店だ。少し大きめなのに両親と姉と3人で店をやっているらしい。だけど名が知れている店だから時期によっては3人じゃキツくなる。そういう時はユイも家族のために学校を遅刻して手伝っていると以前聞いた。学校側もユイの花屋に昔からお世話になっているから店を手伝うことを許しているらしい。でもこの時期卒業シーズンではあるけど今日は手伝う必要はなさそうなのにな。とその時だった。


「せ、精市っ!」


はぁはぁと息を荒げて俺を呼んだのは紛れもなくユイだった。ただその手には見たこともないくらいの量の色とりどりの花があって周りの生徒はみんなユイに目を向けている。


「ユイ、それ…」

「あのね、今年はなんの花にしようってずっと考えてたの」

「うん」

「でも病気のこととか全国大会のこととかいろんなことがあって、」


ユイは目を泳がせて言葉を必死に探している。きっとユイの手一杯のこの花たちはユイが選んだんだろうな。


「いっぱい考えたのに決まらなくて、思うままに選んでたらこんなにたくさんになっちゃって…」

「遅刻してきたの、もしかしてこれのため?」


聞くと小さく頷くユイ。それから消えそうなくらいの声でごめんなさいと呟いた。


「なんで謝るの」

「だって、こんな一杯で、」

「良いよ、ユイが選んでくれたんだから」

「だけど、この花の分だけあたしが伝えたいことがあるとか、迷惑でしょ…」


これでもかというくらいに眉を下げて泣きそうに顔を歪めるユイの頭を撫でるとユイは分かってくれたのか、安心したように笑った。


「精市、誕生日おめでとう」

「ありがとう、ユイ」


に捧げるの花
(今のわたしはハナミズキ)


(ところでユイ)(な、なに?)(他の荷物は?)(持ってきてない!)(………)(でも昨日置勉したから大丈夫!)(…ふふ、そっか)







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