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「どうせあたしは大人しくも女の子らしくもないし!悪かったわねこんな可愛くないのが隣で!」

「あー、うっさいうっさい」


ああ、また可愛くないこと言ってしまった。最早日課のようになりつつある隣の席の財前との口喧嘩。友達には喧嘩するほど仲が良いって言うじゃん、と言われるけどあたしと財前は今年になってから言葉を交わすようになったのだ。仲が良い、と言われるほどの関係じゃない。去年から毎回席替えのたびに財前との距離が近くなっていって、気付けば連続で席が隣になっていた。白石先輩を始め部活の先輩たちにも負けないくらいモテモテな財前。あたしも財前に惚れている女の子の1人だ。最初は当然嬉しかった、けどいざ隣になると仲良くなるどころか口を開けば口喧嘩ばかり。きっと財前はあたしのことを恋愛対象としてなんて見てないと思う。それ以前にあたしはライクの域にすら達してないだろう。じゃなきゃあんなこと言われない。


『お前それ全然似合ってへんわ』

『、』


今日は体育があるからと朝からポニーテールにしてきた。その際にこの間新しく買ったピンクの可愛いシュシュをつけた。少しでも財前に可愛いって思われたいな、とそんな思いで財前の反応を内心楽しみにしていたあたしは呆気にとられた。確かに財前がそれ似合っとる、なんて言うわけないけどだからってはっきり似合わへん、って言うこともないじゃん。財前はあたしに追い打ちをかけるように更にこう続けた。


『お前にピンクが似合うわけないやろ』

『なっ……』

『まあもっと大人しかったら似合ってたかもしれへんけど』


それってなに、あたしは女の子らしくないってことですか。なんとなく分かってたけどやっぱり財前はあたしのことなんか友達としての好きもなければむしろ嫌い、そういうことなんだ。そう思うと先程まで期待をしていた自分ともともと毒舌とはいえ酷いことを言ってきた財前に無性に腹が立ってしまった。


『確かに似合わないかもしれないけどそんなの面と向かって言う必要ないじゃん!』

『陰で言うことやないやろこんなん』

『そういうのは心の中で思うだけにするっていう考えはないわけ!?っていうかいつも思うけど財前毒舌すぎ!相手の気持ち考えなよ!』

『ぎゃあぎゃあ耳元で叫ぶなや。お前の頭に大人しくするとか静かにするっちゅう言葉はないんか』


ああ言えばこう言う、そんな財前に怒りのボルテージは上がっていき、冒頭にいたる。こんなんだからいつまでも財前と仲良くなれないんだ、頭では分かってるのに行動にうつせない自分がもどかしい。


「…ハァ。如月ってほんまうっさいわ」

「な、」

「せやけど」


珍しく財前があたしの言葉を遮るように、ちゃんと聞けと言うようにあたしの目を見た。そういえばこういう時に財前と向き合うの初めて、かも。


「別に俺はお前のこと女らしくないとも可愛くないとも思ってへんから」


ほんの少し、ほんの少しだけ赤くなった財前にあたしは何も言い返せず、赤くなるだけだった。だって、それって、ちゃんとあたしのこと女の子として見てくれてるってことでしょ?


抜けたと零れた


(………)(へぇ、お前でも大人しくなるんや)(う、うるさいな!)(ハァ)(なにその反応!むかつく!)(ほどほどが一番ええわ)(は?)(せやからいつも通りの如月が好きや言うてんねん阿呆)(!)(言うとくけど如月が俺のこと好きなのもバレバレやから)(う、嘘?!)(ほんまや。あとお前ピンクよりオレンジとかのが似合っとるで)(え、)







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