dream | ナノ



「せーんーりー!」

「ユイ!」


教室の入り口でぶんぶんとユイが手を振った。それだけで俺の顔は自然と緩んでしまう。ユイは身長が少し小さくて守ってあげたくなる可愛い子で、俺と並んだら身長差が酷くてなんかやだと本人は身長が小さいのを嫌がっているけど俺はそんなことこれっぽっちも気にしたことはない。確かに周りより幾分か小さいしその分不便なこともあるかもしれないけどその時は俺がユイを助けてあげたいと思うし何より守ってあげたいという気持ちが強くなるし自然と上目遣いになるから俺は嫌どころかむしろ好き。あとキスしようとする時に必死に背伸びしたりするところとかもすごく幸せを感じる。前に白石にそのことを言ったらべた惚れやなって言われたけどそれくらいユイが好きだから仕方ない。そんな俺が惚れ込んでいるユイのもとへ行くとユイはお願いがあるのと言った。


「なんね?」

「あのね、図書室に読みたい本があるんだけどね、高いところにあって…」

「よかよ、俺が取っちゃるけん」


そう言えばユイはパアッと目を輝かせてありがとうと笑った。じゃあ行こうと女の子らしい小さな手で俺の手を握る。高いところにあるなら脚立を使えと突っ込まれるかもしれないけどそんな些細なことでも頼ってもらえるんだからいいじゃないか。好きな女の子に頼られるのは嬉しいことだ。


「で、何処にあると?」

「えっと、こっちかな…?」


少し方向音痴気味なユイはてくてくという言葉で表現出来そうな感じできょろきょろとしながら歩く。数分経って着いたのは料理関係の本があるところだった。


「あそこの黄緑色の本、なんだけど」


ユイがなんとか届く段の2つ上、淡い黄緑の本の背表紙を指してこれ?と聞けばうんと頷く。それを取ってユイに渡すと早速借りてくると小走りで行ってしまった。


「千里有難う!」

「それくらい構わんばい」

「でも良かった、これで千里にお礼出来るよ」

「、お礼?」

「うん、いつもいろんなことしてもらってるから」


この間蔵くんに相談したらお弁当でも作ってあげたらどうだって言われたから、と照れくさそうに笑う。確かにいろんなことをやっているけどそれは俺がユイに頼られるのが嬉しくてなんでもやっているだけで、まさかそんなユイが俺に弁当を作ってくれるなんて思いもしなかったから思わず顔が赤くなってしまった。千里に喜んでもらえるように頑張るね!と意気込むユイ。もう既に嬉しいのに、なんて言ったら何もしてないのに、と拗ねてしまいそうだからやめておいた。


溺死
(しそうなほどユイが好き)


(千里の好きなものいっぱい作るんだ!)(楽しみにしてるばい)(あ、どうせなら一緒に屋上で食べたいね)(最近晴れてるから大丈夫たい)(えへへ、それなら安心だね)







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