dream | ナノ



「あたし、白石くんのことずっと好きやってん」


階段の踊り場で蔵ノ介が告白されてるのを見てしまった。何度目か分からない告白の場面。昔から何回も何回も見てしまっているけれど、見てしまうたびに息するのも辛いくらいに胸がきゅうと締め付けられるような感じがして苦しくなる。


「堪忍な、」


蔵ノ介が困ったように笑ってそう断るのも数えきれないくらい見ている。蔵ノ介に好きな人が居るのかもどういう子が好きなのかも、あたしは知らない。聞いたらきっと蔵ノ介は気付くから、あたしが蔵ノ介を好きだと。そして困ったように笑ってその質問をかわす。目に見えているからあたしは言わない。幼い頃からあるこの想いを、蔵ノ介には言わない。







「また告白されてたね」

「、見てたん?」

「友達探してた時にたまたま見ただけ」


あたしにそんな趣味無いから、と笑うユイ。でも彼女は俺が告白されているところを昔から何回も見ている。それが偶然っちゅうのは分かっとる。ただ彼女は毎回のように蔵ノ介はモテモテだねと笑う。付き合ってるわけやないからこんなこと思うのはおかしいって分かっとるけど、嫉妬とか思ってくれたらな、なんてたまに期待してまう俺のこの想いを伝えたらユイは困るんやろか。今まで告白されても全部断ってきたけど、それはその子がどんなに可愛くても優しくても結局ユイより好きになれそうもなかったから。でも肝心のユイは俺なんか幼馴染みにしか見とらんくて、好きな人が居るのかどういう奴が好みなのか、それすらも分からへん。


「なぁ」

「うん?」

「………」

「蔵ノ介?」

「やっぱ、ええわ」

「え?」

「すまん、気にせんといてや」


不思議な顔をするユイ。ほんまは好き、って言ってしまいたかったんやけど、やめた。言ったら今まで保っていたこの関係が壊れてしまいそうだったから。


「…蔵ノ介」

「なや」

「……えっと」

「?」

「………部活頑張ってね」

「…おん」


ユイもまた、何かを俺に言おうとしたみたいやったけど目を泳がせてからそう言って気にしないでというように苦く笑った。言及しないほうがええと思った俺は、気をつけて帰りやなんて月並みの言葉をかけてそこでユイと別れた。


ふたりのモノローグ


(…好きって言いたかったけど、言ったらきっと蔵ノ介を困らせちゃうよね……)







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