dream | ナノ



ずっとずっと好きだった、


「ユイも一途やなぁ」

「え?」

「去年の4月からやろ?」

「長いなぁ…」

「え、ちょ、ちょっと?」


光を除くレギュラーが揃う部室、気付いたらみんなの視線があたしに向かっていて何かと思えば口々に何かを言う。けど主語が無いのに話が分かる訳もなく、あたしは手を止める。


「さっきから何が言いたいのか分からないんだけど…」

「そら財前のことに決まっとるやんか」

「、」

「一目惚れやったからそう考えたら長いなぁ思って」


誰かが何かを言えば他のみんなはうんうんと頷いて同感と言いたげだった。確かにあたしは去年の4月、部活を体験しに来た光に一目惚れをした。それからずっと好き。でもそんなの今更思うことでもないじゃん。光以外のみんなは気付いてるみたいだし蔵とかには相談してるし。


「一途なのはえぇけど早よせんと俺ら引退してまうんやで?」

「だ、だけどそんな簡単なことじゃないじゃん…」

「でもこのままは嫌やろ?」

「………、」


確かにこのままは嫌だ。引退したら同じ学校って言ってもなかなか会えなくなるし卒業したら尚更会う機会は減る。だから告白したいって言えばしたいけど、振られて話せなくなるのも嫌だ。


「…結局、光に告白するにせよしないにせよ嫌なことは多少あるんだよね」

「そんなん気にせんと言いたいなら言えばえぇやないですか」

「そ、それもそうだよね!…って、え?」

「なんすか」


頭の中が真っ白になった。たった今まで話題にしていた光があたしの真後ろで呆れたように、面倒くさそうに邪魔ッスわとでも言いそうな感じで立っていた。レギュラーのみんなもまさかこのタイミングで光が来ると思っていなかったのか驚いてる。


「え、え、光…!?」

「そうやけど」

「い、いつからそこに…!」

「早よせんと俺ら引退してまうんやでとか辺りッスわ」

「や、やだ!なんで止めてくれないの!」

「なんで、って言われても」


大事な話なのかと思ったんで、と光は呟くと告白云々について何も触れずに帰る支度を始める。…触れられてみんなの前で振られたくないけど全く触れられないのもなんていうか、遠回しに興味が無いって言われてるような気もしちゃうんだけど。


「…ほな、帰ろか」

「、…うん」


蔵はあたしの心情を察したのか、あたしの頭をやさしく撫でた。そしてみんなは蔵のその言葉を合図に次々と部室から出ていく。


「………、」

「ユイ先輩」


何も言わない光に振られたかな、とネガティブな考えをしているあたしを光が呼ぶ。でも何を言われるのか分からなくて怖いあたし。振り向かずに立ち止まって次の言葉を待っているとふいに腕を引かれた。


「え…!」


バランスを崩しかけて慌てて振り向くと目の前に光の整った顔があって唇に柔らかい何かが触れて、光の顔はすぐに離れた。


「…え、ひかる…?」

「返事」

「返事?なんの?」

「……ハァ」


分からないなら分からなくてえぇです、光はぽつりと呟いてあたしの横を通り抜けた。…え、待って、返事って、もしかして…。


つまりそういうこと


(嘘…)(嘘ちゃうし)(だってそんな様子なかった、)(去年からずっとやけど)(え、あたしも去年からなんだけど!)(………)(運命みたい…!)(めでたい頭やな)(な、)(まぁそういう阿呆なとこも好きやけど)







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