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見方によっては近親相姦





「お前さん、なにしとんじゃ」


壁に背を預けた状態で座り込む同じ学年のある男。その顔の横に足をついているわたしを見てまさが呆れたように言った。あー…、体育館裏だしみんな部活だからってちょっとこれはいけなかったかなあ。んー、でもこの男が悪いわけだしなあ。と弁解を考えながらもとりあえずは答える。


「なにって、忠告?」

「どう見ても脅しじゃろ」

「えー、だってヤらせろって言われたんだもん」


わざと口を尖らせて拗ねたように言ってみせたのにまさは呆れたまま足を下ろすように言った。渋々足を下ろす。そして声を掛けてきた目の前の男を見れば何故だがまさに視線を向けたまま血の気が引いた顔をしている。


「なあ」

「っは、はいぃ」


そしてまさが話し掛ければびくりと肩を震わせた。ん?まーくん怒ってますねー。にっこりと笑ってるその顔がとてつもなくこわいですよー。


「良い度胸しとるんじゃの、ユイに手を出そうなんぞ」

「………っ!」


あー、殴りそう。めんどくさいことにならないといいなあ。自分で言うのはどうも気が引けることなのだけれど、わたしの双子の兄であるまさはどうもシスコン気味らしい。いや、わたしはそれが普通だと思っていたし事実わたしも逆の場合だったらまさと似たような感情を抱くだろうからわたしもブラコン気味ということになるのだけれど、ブン太にそう言われたことがある。お互いに自覚がほとんどないのだけれど、とにもかくにもわたしたちは相互依存をしているらしい。だからお互い恋愛なんてものには興味がないし男女でペアになることがあれば必ず一緒だ。そんなわけだからまあこういう風にまさが怒ることは珍しくないし、またわたしもまさに言い寄る女には片っ端から忠告している。結局相手が嫌なことは取り除きたいという気持ち故なのだ、わたしもまさも。


「またユイに近付いてみ?お前さん、潰すぞ」


あ、手出さなかった。わたしたちは手癖足癖が暴力的な意味で悪い。特にまさは顔だろうがどこだろうが容赦ないから一度でも手を出されれば面倒くさいことになりかねないのだ。とかしているうちに声を掛けてきた男は逃げるように去っていた。


「ありがと」

「大したことしとらんじゃろ」

「でもまさが言ってくれた方がみんな肝に命じるし」

「それなら良いんじゃけど」

「で、まさはなにしてたの」

「サボり」


さらりと平気で言ってのけたまさに顔がひきつった。こらこらこらこら。真田くんとか角生やしてるでしょ!とわたしと同じくらい白いその腕を掴んで引っ張る。まさは露骨ためんどくさそうな顔をして心底だるそうな声音で行きたくないだの言っている。いやいや普段の授業ならどうせこいつそれなりに点数取るしわたしもそうだからなにも言わないんだけど、っていうかむしろ一緒にサボるくらいなのだけれど。さすがに部活のこととなるとそうもいかない。実のところ、まさが怒られるとわたしまで巻き添えを食らうのだ。ちゃんと言っておいてくれだのと頼まれるのがどれほどめんどくさいかまさは知らないから気ままにサボってられるんだろうことは想定済みだけど!


「ユイちゃーん」

「なに」

「言い訳するの手伝って」

「は」

「良いじゃろ助けてやったんじゃし」


これでチャラじゃ、と楽しそうににこにこ笑い語尾にハートがつきそうな調子でまさは言うけどこのやり取り何回目だと思ってるんだろうか。大体チャラじゃない。わたしが助けられた回数はまさに言い寄る女にわたしが警告した回数と同じくらいだからそこで大体プラスマイナスゼロと言ったところだ。つまり言い訳をするのを手伝えば手伝う分だけわたしはまさに貸しを作っているわけだ。それを前々から言っているけどいつも上手い具合にはぐらかされてるし、なんだかんだ甘やかす辺りまさとの関係はそういう類いのものは無しに対等でありたい証拠だから大して気にしているわけではないけれど。


「まあ助けられたのは本当だし、言い訳手伝ってあげる」


そう言えば空いている方の手でお礼の言葉と共によしよしと頭を撫でられる。こういうときにする兄面というか、兄である雰囲気にどうも慣れなくて照れてしまう。そしてそれを知っているまさはくつくつと笑うのだった。













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