dream | ナノ
どきどきどきどき
さっきから鼓動が異常な早さで打たれている。今日は赤也くんの誕生日。一応わたしは赤也くんの彼女で、だから頑張って赤也くんにショートケーキとチョコレートケーキをそれぞれワンホール作ってきた。あと赤也くんが焼肉弁当が食べたいっていうから焼肉弁当も作ってきた。土曜日にも関わらずお昼を跨いでテニス部は練習していて赤也くんは幸村先輩たちが居ないけど、新しい部長としてみんなを頑張って引っ張っている。でも今日は赤也くんの誕生日だからか幸村先輩たちが来ていて赤也くんは今、楽しそうに先輩たちと試合をしている。赤也くんはきらきらした笑顔で、本当に嬉しいんだなって物凄く伝わる。わたしはその間どうしていたかというと赤也くんにベンチで見てろ、とわたしだけ他の子と違って1人特等席であるベンチに座らせてもらっている。赤也くんは先輩たちと試合したり部長の仕事したりで忙しいからアイコンタクトくらいしか出来ないけど先輩たちは自由だから時々仁王先輩や丸井先輩がわたしに話し掛けてきてくれた。そして今は幸村先輩と赤也くんの試合を
見ている。
と言ってもこれが終わったらお昼ご飯の時間でつまり赤也くんがわたしの作った焼肉弁当を食べるということで、緊張しているわけで。大丈夫かな、と思っていると幸村先輩と赤也くんの試合が終わって、わ、お昼ご飯の時間だ…!
「おい、」
「わぁっ!…え、な、なに?」
「…なに緊張してんだよ」
「あ、えっと、あの、」
答えに戸惑っていると不意に赤也くんに腕を引かれた。どうやら部室で食べるらしい。ファンの子が来る前に赤也くんとわたしは部室に入る。と、幸村先輩たちが居て、わ、わたしなんかがこんなところに居ていいのかな…!そんなわたしの気持ちを感じ取ったのか赤也くんは俺の彼女だから居て良いんだよ、って言ってくれて、幸村先輩たちはわたしが赤也くんの彼女と知っているけどやっぱりそれでも人前で彼女だからと言われると恥ずかしくなってしまって顔が赤くなるのを感じた。
「それよりさ、」
「、」
「まじで焼肉弁当?」
「…い、嫌だった?」
「っていうよりまじで作ると思わなかった」
「だってせっかくの誕生日だし、こういう日くらい好きなものだけ食べても良いと思って、」
そう言うと赤也くんは照れたのか少し頬を赤らめた。視界の端で真田先輩の様子をうかがったけど(だって好きなものだけ食べるとか許さなそうだし…)そこは幸村先輩と柳先輩が説得してくれたみたいで何も言われなかった。赤也くんに焼肉弁当を渡す、前に
「赤也くん」
「あ?」
「誕生日おめでとう」
「………、」
言うのを忘れちゃいけない、お祝いの言葉を言うと先輩たちがぱぱぱぱーん!とクラッカーを一斉に鳴らして赤也誕生日おめでとう!とお祝いした(さっき先輩たちと話した時にこのことは打ち合わせしてたけど予想以上にクラッカーの音が大きかった)。すると赤也くんは目を丸くして、それから、俯く。
「あか、や、くん…?」
「やべ、まじ、嬉しい…」
「!、」
「今までで一番、幸せ、かもしんねぇ」
その目にはうっすら涙が浮かんでいて、わたしは勿論先輩たちも面食らった。でもそれから赤也くんは顔を上げて今日一番の笑顔を見せてくれた。
白昼の祝宴
(あ、ケーキもあるから、後でみんなで食べよう?)(まじか!後でと言わず今食べようぜぃ!)(今日は俺が主役なんすからね!)(にしてもワンホールずつって…)(更に焼肉弁当ときたもんじゃからすごいのぅ)(赤也の彼女っていうのが勿体ないな)(ちょ、何言ってんすか先輩!)