dream | ナノ
「宍戸、悪かったってばー」
「………」
隣の席の宍戸は不貞腐れてあたしの顔を見ようともしない。だってあたしだって人間だし!忘れることだってあるし!いや、でもさすがにこれは駄目か。この間偶然、忍足と向日が宍戸の誕生日のことを話してて、宍戸に誕生日いつ?って聞いたら今月の29日って言うからじゃあ宍戸の好きなチーズサンド作ってきてあげる!って自分から言った。くせに日にちを間違えて、明日だと思って作って来なかった。そんなにチーズサンドを楽しみにしていたのか宍戸は怒っちゃって冒頭に至る。どうしよう。
「宍戸、ほんとごめんね…?」
「……激ダサ」
「う」
「作ってくるって言ったのお前だろ」
「うん…」
「………」
はぁ、と宍戸がため息を吐く。あああ、ほんとあたし馬鹿!
「明日は絶対作ってくるから、ね?」
「………」
「ううう、」
宍戸は全然許してくれそうにない。最後の頼み、と思ってあたしが出来る範囲ならなんでもするから!と手を合わせて許しを請う。すると宍戸は不貞腐れたままだけどこっちに向いてくれた。ゆ、許してくれる…?
「なんでもするんだな?」
「、うん」
「絶対?」
「あたしが出来る範囲ならぜ、絶対する」
しなかったら激ダサだな、と宍戸は不貞腐れたまま言う。や、やばい、なに言われるんだ…!とどきどき待っていたけど、なかなか宍戸は口を開かない。え、あ、あれ、宍戸くーん?
「…なぁ」
「うん?」
「お前、って、さ、…あー」
「え?なに?」
宍戸はあー、と唸る。顔がほんのり赤いけど、…なんで?
「宍戸ー?」
「す、好きなやつ、とか、居んの、かよ」
「…特には……って、え?」
も、もももしかして、え、あの、この展開、って、う、え、自惚れちゃうけどあたし。
「…無理に、って、言わねぇけど、もし、よかったら、」
と言ってから、また沈黙。宍戸のこと、そういう風に見てなかったあたしなのに、変なの。いま、すっごいどきどきしてる。おかしい、よ。
「…つ、付き合って、ください」
そう言った宍戸はさっきまでの不貞腐れた顔じゃなくて、テニスの時と同じくらい真剣な顔で、でも頬はほんのり赤くて、かっこいいけど可愛かった。
誕生日プレゼントはあたし
(ベタだけど、なんか、いいかも)
(いい、よ)(、は)(なんか、いま凄いどきどきしてる、)(………、)(だからあたし、宍戸に、惚れた、かも?)(かも?ってなんだよお前)(ほ、惚れました!)