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「おはようございます、如月さん」

「おはよ、仁王くん」

「………」

「だからあたしはペテンに掛からないってば」


懲りないね、と如月が笑う。俺と柳生が幾度入れ替わろうと如月には通用しない。如月は唯一、ペテンに掛からない人間じゃった。だけど俺は一度でもいいから如月をペテンに掛けたくて、特に用事はないのに柳生だけじゃなくたまには丸井とかに成り済まして如月に話し掛けた。今まで何回挑戦したかは分からないけど、如月は一度も俺のペテンに掛かってない。つまり、俺は如月に全敗している。


「そろそろ諦めたら良いのに」

「なんでじゃ」

「絶対仁王くんのペテンには掛からないもん」

「その自信は何処から来るんじゃ」


そう言うと如月は何処からだろうね?と誤魔化した。逆に仁王くんはどうしてあたしをペテンに掛けたがるの?如月が首を傾げながら問う。それは、………。


「…なんとなく?」

「えー」


…本当は好きな女にこうも負けっぱなしなのは性に合わないだけなんじゃけど、そう言ったらつまんないのーと頬を膨らませる目の前のこいつはなんて言うんじゃろうか。


「でもそんな理由じゃ絶対無理だよ」

「………」

「だってあたし好きな人のこと絶対見間違えたくないって思ってるから」

「は?」

「だから、仁王くんが好きだから絶対見間違えたくないの」


…それじゃあ、尚更ペテンに掛けたくなる。ずっと負けっぱなしって、なんか俺が如月を好きな気持ちより如月が俺を好きな気持ちのほうがずっとずっと上みたいで悔しいからの。


好き


(絶対ペテンに掛けちゃるけん)(さ、さっきより目がマジなんだけど)(俺のがお前さんを好きじゃき)(え!?)(じゃから覚悟しときんしゃい)







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