dream | ナノ
「せ、せーいちくん」
「どうしたの?」
「…さ、寒い、ね」
「本当にユイは寒がりだね」
精市くんが寒さで頬をほんのり赤くしながらくすくすと笑う。今日はいつもより寒いとかなんとか天気予報でお姉さんが言ってて寒がりなわたしはマフラーと耳あてもつけて学校にきた。朝はなんとか乗り切れたんだけど、夕方って、うん、寒い。
「精市くんの温もりが救いだよー…」
とか言って精市くんと密着してみたりする。笑ってた精市くんだけど、あれ、と不意に呟いた。
「?」
「ユイ、手袋は?」
「え?……あ」
言われて自分の手を見る。防寒具が何か足りない気がしたと思ったら手袋だったのか…!玄関に置きっぱなしな気がする…!道理で寒いわけだ。納得していると精市くんが手袋を片方渡してきた。頭にクエスチョンマークを浮かべるわたし。
「それ、右手につけて」
「え、でも、」
「いいから」
「は、はい…」
精市くんの右手は寒くないの、と聞く間もなく自分の右手に精市くんの手袋をはめる。あ、あったかい…。
「それで、左手出して」
「?はい」
次は何をするのかと思うと、精市くんは手袋を外したその右手でわたしの左手を握ってポケットの中へ。…って、わ、わああああ!なんか漫画でカップルがやるようなことを…!いや、わたしたちもカップルだけどまさかこんな日が来るとは…!
「ユイの手、冷えてるね」
「、」
「…俺の手、暖かい?」
「凄いあったかい…」
「じゃあユイの家に着くまでこうやって暖めてあげる」
「、ありがと…」
精市くんはにっこり笑っておでこに口付けた。
手袋は片方だけで
(ひ、人居るから精市くん!)(お礼ってことで)(え、あ、)(顔真っ赤だよ、ユイ)(精市くんが恥ずかしいことするからだよー!)