dream | ナノ



「あ、雅治」


ぽかぽか暖かい陽射しに、さぁっと吹くそよ風に、絶対ひなたぼっこしたら気持ち良いだろうと思って屋上に軽い足取りで行くと先客だが居た。そよ風にゆらゆら揺られる銀色の髪が少し眩しく見える。


「お前さんか」

「なにそれ、シャボン玉?」


あたしに気付いて振り返る雅治の手元にはシャボン玉らしきもの。少し遠くに暖かい陽の光を反射するシャボン玉が飛んでいるのが見えた。シャボン玉なんて、中学に入ってから全然見てなかったなぁ。とぼんやり考えながら雅治の隣に立って背を柵に預ける。ぽかぽか眠気を誘うような暖かさ。教室で授業受けてたら確実に夢の中だ。多分赤也とかブン太とかは、うとうとしてるんじゃないかな。あ、でも今の時間、赤也は英語の小テストだって昨日嘆いてたっけ。部活で会った時に落ち込んでないと良いけど。見事に雲一つ無い青空を見上げながらそう考えて、でもそんな考えもそよ風がゆっくりと攫っていく。このまま寝ちゃいそう、なんて。隣の雅治を見ると街を見ながらシャボン玉を空に送り出していた。雅治とシャボン玉ってミスマッチなようだけど全然そんなことない。なんていうか、絵になる。


「シャボン玉、楽しい?」


そう聞くと雅治はぴたり、と手を止めてこっちを見る。きょとんとしていたけれどふっと小さく笑った。かと思えばなんでもなかったかのようにさっきと同じように街に視線を戻した。


「たまにやると楽しいもんぜよ」

「あはは、なんか雅治可愛い」

「ん?そうかの」


お前さんの可愛さには適わんけどな、と言ってまたシャボン玉を作って空に送り出すと雅治はまたこっちを向いて、今度はくつくつと面白そうに笑った。きっと今のあたしの顔は赤いから、ぷいっと顔を背けた。





ああもう、ひなたぼっこしにきたはずなのに、雅治のばか。でも拗ねなさんな、と雅治が大人しく頭を撫でてきて、それがどこか心地よかったからまぁいっかな、なんて。







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