dream | ナノ



『先輩告白しないんすか?』

『は、?』

『だからユイに』

『な、んでじゃ』

『なんで、って早くしないと取られちまいますよ?』

『、』

『ほら、あいつ最近よく告白されてるじゃないすか』


だから早くしないと他の奴が取るかも、なんて赤也と話したのが何十分か前の話。ユイは俺の一つ下のマネージャー。人懐っこくて一緒に居て楽しいやつで、仕事もしっかりこなす。家の方向が同じだから部活帰りは必ずといっていいほど一緒になる。気になり始めたのははっきりしとらんけど、多分あいつが入ってあまり経ってない時にミスを連発して自信を無くしたと弱音を吐いた時だと思う。いつも悩みなんか無いみたいな雰囲気で居るからネガティブな考えはほとんど無いやつなんじゃろうなと思っとったから本当に驚いた。印象が結構変わってからあいつをもっと知りたいって思うようになって、気付けばそれは恋心になってた。だけど告白しようと踏ん切りをつけれずにいる。…更に言うと情けないことに好きな人が居るかすらも確かめれずにいる。つまりなんのアクションも起こせてない。それを柳生に話したら意外ですねと驚かれた。ま、当たり前の反応じゃろうな。知らんうちに誰とでも付き合う軽い男だと噂が一人歩きしとるようなやつが蓋を開けてみれば好きな人が
いるかも聞けないようなへたれなんじゃからな。


「それで、……仁王先輩聞いてます?」

「ん?あー、すまんすまん」


もう、とユイが口を尖らせて拗ねる。今日もいつものとこでみんなと別れてユイと2人で帰路を歩く。どきどきと早くなる鼓動には気付かない振りをして拗ねなさんなと頭を撫でてやる。そうしてやれば不機嫌がなおる。


「…今日の先輩、どこか上の空ですね」

「、」

「なにか、ありました?」


お前さんのこと考えとった、なんて口が裂けても言えない。でも赤也の言う通り、このままじゃいつか他の奴に取られる。それは、いやじゃ。


「…お前さん、は、」

「はい?」

「…か、彼氏、とか、そういうやつ、居るんか?」

「へ?」

「あー、いや、」


少しだけ震える声でぎこちなく聞いてみればユイは立ち止まって何を言い出すのかとそんな顔をして俺を見た。思わず目を逸らしてしまう。なんでもなかと言おうとしたがそれより先に居ませんよと返ってきた。その言葉にほっと安心する。けどそれも束の間。先輩は居るんですか?と返されて言葉に詰まった。と同時に言ってしまうべきか否か頭がぐるぐると回る。


「あ、いえ、言いにくかったら良いんです」

「………、」

「ただ噂あるから、少しだけ気になってて、その…」


噂。あの、一人歩きしとる噂か。ってことはユイは俺を軽い男じゃと思っとるんか?と思った時には今までのへたれっぷりが嘘みたいに言葉を紡いでいた。


「っ俺は、お前さん以外、見とらん」

「、」

「ずっと、ユイのことだけ、好いとる」





(え、あ、の)((っ、言って、しまった…))(ほ、ほんと、ですか?)(…ほんと、じゃ)(………い)(ん?)(うれしい、です、)(…え)(わ、わたし、も、好き、だから…)(!)







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