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「財前くんて、今日が誕生日やったんやね」


先輩が図書室のカウンターに寄り掛かってハードカバーのそれに目をやりながら呟くようにそう言った。そしてカウンターに置いてある中から小さめのプレゼントを手に取りじっと見ながら道理で今日の図書室の人口密度が高いわけやと言う。そう、今日は俺の誕生日なわけやけど、幸か不幸か図書当番の日でもある。おかげで例年のように騒がしくないもののどこにも逃げることのできない昼休みになった。せやからプレゼントは積もりに積もっていく。これ一人じゃ持ってけないわ、とその山を見て思う。いっそのこと忘れものとして扱いたいけどどうせすぐに俺宛のもんやてバレて結局は持ち帰らなあかんことになるんやからそれもできん。ぶっちゃけ先輩からのプレゼントだけが欲しかったんやけどどうもこの人は俺の誕生日を知らんかったらしいから貰うことすら無理そうや。まあ、この人は俺らとか見てもみんな顔整っててどこのアイドルグループや思ったわ、とからから笑うだけで大して興味を見せん(多分俺が知る限りで一番興味を示さん)
人やからこんな態度でも頷ける。けど先輩に所謂恋心っちゅうのを抱いてる身からしてみるとそれは大分胸に刺さるもんで事実、今も主にプレゼントやらが原因で沈んだテンション(いや、元々低いけどそこは突っ込まんでや)に拍車をかけてこれ以上ないくらい憂鬱にさせとる。それを知るわけもない目の前の先輩は呑気に財前くんモテモテやんとか言っとるわけやけども。


「…先輩は、なんもくれないんすか」

「なん、こないに貰っとるくせにまだ欲張るん?」

「別にくれって言うたわけやないし」

「そない冷たいこと言うたら可哀想やん」

「せやけど無理矢理押し付けられた感じするし」

「まあ、それは見てて思ったけど」


けどあたしが仮にあげたとしてもこのプレゼントと同じ価値しかあらへんのやろ?少しだけ眉をひそめながらそう聞いてきた。………。それって少しだけ期待しても許されることやんな。そう思った俺は賭けに出るような気持ちで俺はなんでもええから先輩からプレゼント欲しいんすわー、と先輩を見て言う。その言葉が予想外だったのか俺を見た先輩の顔は少し赤くなる。


「せ、せやかて、あたしなんも持っとらんし、」

「なんも?」

「財前くんにあげれるものなんや、な、なんもないで」

「ふーん…」

「っ、だ、大体財前くんの欲しいものとか分からんし…」

「欲しいもん、言うたらくれるんすか?」

「あ、あたしがあげれるもんやったら…」

「ほな先輩」


ぐい、と細い腕を引き寄せて耳元で先輩が欲しいんすけど、と低く甘い声でそう言えばかああっとそんな効果音がつく勢いで先輩の顔はゆでだこみたいに真っ赤になった。


他には何もいらないから
(先輩が貰えれば満足っすわ)


(な、なん、それ、)(そのままの意味っすけど)(じょ、冗談やったらぶっ飛ばすで…!)(今までに先輩に冗談言ったこと無いんすけど)(………)(で、くれるんすか?)(…ひかるが欲しいならいくらでもくれたるわアホ)(なん、今のむっちゃキたんやけど襲ってもええですか)(それは断る)







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