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執事パロ、名前変換無し





「雅治」


探している彼の名を呼べばひょっこりと皮を被った彼が顔を出した。


「なんじゃ、お嬢」

「違う、雅治はどこ」

「此処に居るじゃろ」

「似非に用はないの」

「…そうですか、それは残念です」


わたしが探している雅治に成り済ました柳生は、ウィッグを外して眼鏡をかけて服装もいつも通りに戻す。他の家族や使用人たちは騙せてもわたしにペテンは通用しない、それは雅治も柳生も知っているはずなのにどうしてか変装をやめない。むしろ頻度が上がっている気がするのはなにか意図があるのか否か。いや、そんなこと今はどうでもいい。


「で、雅治はどこ?」

「さあ…、変装してくれと頼んできましたが理由は言いませんでしたね」

「予想はつかないの?」

「残念ですが」

「………、」


いつもならこれで雅治が何処に居るか分かるのに、今日はどうしてか柳生に居場所すら教えてないらしい。一体何があったのだろう。もちろん変装していた柳生だけどその言葉は嘘じゃないことくらいさすがに分かる。だからわたしはそれ以上は聞かず柳生に別れを告げて自室に戻った。そのうち戻ってくるだろうことを信じながら本を読んで暇を潰すこと数十分。ばん、と扉が乱暴に開いて何事かと目を向けるとそこには探していた雅治が、おそらく走ってきたからだろう、息を切らしながらも立っていた。


「…おかえり」

「た…、ただい、ま」

「何処行ってたの」

「は、」

「柳生もみんな分かんないって言うから暇だった」

「いや、朝言ったじゃろ…」

「え、」

「え、」


覚えとらんのか?と苦笑を浮かべる雅治はこちらに近付きながら聞いてきた。しかし思い返しても心当たりがなく、知らないと首を振ればため息を一つ溢した後に朝の様子を話してくれた。


「お嬢、起きんしゃい」

「んん、」

「お嬢、朝じゃ、」

「んー、なに…?今日なんかあるの…?」

「あー、実はな…昨日言うの忘れとったんじゃが、野暮用で幸村のとこに行くことになったんじゃよ」

「…朝から……?」

「幸村の都合じゃき、仕方なかろ」

「…いつ帰る…?夕方…?」

「多分それくらいじゃ、もしなにかあったら柳生呼ぶんじゃよ」

「ん、わかった…」

「…すまんな。いってくるぜよ」

「…うん、行ってらっしゃ…」

「あ、一応柳生に変装するよう頼んどいたからよろしくな」

「んー…、わかっ、た…、」


という感じでわたしは朝から雅治が何処に居るかを言われていたらしい。いや、そんな寝起きでの出来事をわたしがいつも覚えていないことは今に始まったことじゃないのに何故。


「寝起きのわたしに何故言った」

「いや、普通に会話成立しとったし」

「メモ置いていきなさいよ」

「お嬢がメモは置くなって言ったんじゃろ」

「………」


確かにそんなことを前に言ったような記憶はある。反論の言葉を返せなくなったわたしは今回自分の責任を認めざるをえないらしい。でもわたしが寝呆けてたのが悪いかもしれないけど、雅治だって自分が留守にするからってわざわざ柳生に変装させるなんてややこしいことする必要はないんじゃないの?その旨を言えば雅治はニッと笑った。


「俺が居ないとお嬢が寂しいじゃろうから頼んだんじゃ」


その自信は何処から来るの、そう言えなかったのは図星だったからだ。そして目の前の彼もまたそれを分かっているのだろう、してやったりと言わんばかりに口角をあげていた。こうなればもうそれ以上はなにも言えないのだが、一つだけ気になることがあるわたしは気恥ずかしさを堪えながらも問い掛ける。


「…ねえ、なんで走って帰ってきたの」

「柳生がお嬢が寂しがってるって連絡寄越したきに」

「…さすが雅治の相棒ね」


ああ、雅治だけでなくて彼の相棒である柳生にもお見通しなのか。知られているからとてどうするわけでもないけど、自分の好意を拒まれないことは少しだけ嬉しいなと浮かれてしまった。









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