≒ 「ブンちゃーん」 「ん?」 「じゃーんっ!」 見てみて!とわたしがブンちゃんに見せつけたのは週刊のコミック誌。朝イチで買ってくるのはわたしの習慣。ブンちゃんはナイス!と笑ってはおいでと手招きをする。 「いつも偉いなー!」 わしゃわしゃと頭を撫でられる。ブンちゃんに撫でられるなら頑張って整えた髪がぼさぼさちになろうと構わない。わたしは足を広げて座るブンちゃんの、その足の間にちょこんと座る。そしてブンちゃんがわたしの頭に顎を乗せる。端から見れば恋人同士に見えるかもしれない、けれどわたしとブンちゃんは付き合ってない。ジャッカルよりも付き合いが少し長くて、周りよりも仲が良いっていうだけの話だ。 「やばいめっちゃかっこいい!」 「これはずりーだろぃ」 「人気なの分かるなあ」 どっちも好きなスポーツ漫画を見ながらやいのやいのと楽しむのは毎週のこと。ブンちゃんが部活で忙しいからこうして学校で楽しむしか出来なくなってしまった。 「相変わらず仲良しじゃの」 呆れた表情でパンといちごみるくを手に持つのはブンちゃんの部活仲間でわたしたちのクラスメイト、まーくん。気づいたら仲良くなってた。ついでに男テニで仲良しなのはブンちゃんとジャッカルとまーくんくらい。たまに赤也くんとも話すけどそこまで仲良くはない……ようなそうでないような。 「羨ましいのかよぃ」 「いや、付き合っとらんのが不思議じゃと思ってな」 「別にそういう関係求めてないし」 「俺らどうせお互いのこと好きだし」 「そうそう」 「ほー、愛し合っとるんか」 「うん」 「そりゃそうだろぃ?じゃなきゃこんなことしねえよ」 「でも友達なんじゃろ?」 「うん」 「別にいいだろぃ?」 「それはそうなんじゃがなあ…」 釈然としない、そんな表情のまーくんを見てやっぱりわたしたちの関係はおかしいんだろうなあとぼんやり思う。まーくんだけじゃない、いろんなひとがわたしたちの関係について疑問を抱いている。昔から何度も何度も聞かれている。だけどわたしたちは自分たちの関係を明確には示さない。提示された言葉を否定するだけ。だからみんな今のまーくんのように釈然としないまま言及を諦める。そのうちみんなも聞いても無駄だと思い始めたのか聞いてこなくなった。でもそれでいい。わたしとブンちゃんは一言ではなかなか片付けられないのだ。 2013/03/13 |