愛だの恋だの実はあんまり分かっていない僕がいます。目の前で白い喉をひくつかせる君が泣いてるんだか笑ってるんだか、それすら判別できない偏差値30の僕です。喚き疲れて息も絶え絶えな君がそれでも懸命に吐く悪態の通り、そうです僕は馬鹿なのです。馬鹿な僕は嫌い? 試しに聞いたら殴られました。痛いなあ。でもそんな僕にも分かることがあって、君が本当は優しいこと、触れると柔らかくて温かいことや、寝顔が子供みたいなことは、教えられなくても知っていた。そうつまり僕は君が好きなのです。だからこんな馬鹿馬鹿しい真夜中も愛しくて、どうにもシリアスに成りきれない僕らでも恋人同士だと言えるのでしょう。「君には一生わからないよ。」それでも一緒にいるのでしょう?

 愛だの恋だのに素直になれずに口ばかり悪い私です。激しいヒステリーの名残で呼吸が落ち着かない私を、何故だか懸命に見つめる君が本当は愛しくてたまりません。それを伝えたくて、でも上手く形にならなくて、馬鹿、と呟いたらひどく見当違いなことを聞いてきました。余裕ありげな物言いが勘に触ったので殴っちゃいましたよ、ああもう。どうしてこんな男が好きなのでしょう。愛の言葉が薄っぺらくて、慰めるのも下手くそで、顔ばかり綺麗な頭の弱い男。私を懸命に好いてくれる男。ああそうです、君はいつだって、ひたむきに私を見ているのです。そうして私が君を好きなことを知っているのです、にくらしい。「僕には一生わからないよ」それでも一緒にいるのよばーか。
ねぇ大丈夫?
…………。
お腹がすいたの? 眠いの? セックスしたいの?
お前私の不機嫌を三大欲求のせいにしてんじゃねぇよ死ねよ。
えー…どれか分かんないならコンビニ行こうよ。おいしいご飯もホットココアもコンドームもあるよ。ちなみに僕は今アメリカンドッグ食べてはちみつレモン飲んだ後、君とセックスして一緒に寝ちゃいたい気分です。
死ねよ…もう…もうほんと何なのもう…ばかなの…。
行くでしょ?
…行く…。



title:魚とアイデンティティ