「んーっ!!」
その出来事に気が動転して、抵抗を弱めていたカインが再び暴れはじめる。彼が足や手を動かすたびに破れたローブが、ひらひらとはためく。
しかし、モンスターは拘束を強めるだけでカインの抵抗など無意味なのだと言うように、彼の腰や腹を撫でる。
モンスターの体液にまみれた肌は、木陰に差し込む光を反射して光っていた。水気を帯びた体は、外気に触れてぞわりと寒気を知覚する。
ふと、一本の腕が腹から上へと伸び、鎖骨を撫でる。そのまま首を伝い、なにをするのかと戦々恐々とするカインの耳元にくる。
「――っ! はっ、やめっ!」
耳を舌で舐められているような感覚に、カインの声があがる。淫らに濡れた音が間近で響き、体がびくんと跳ねた。
モンスターが何を考えているかわからないが、やっと口をふさいでいた腕が外されたというのに、カインは呪文の詠唱さえままならない。
彼の口をふさいでいた腕は、他のそれよりもてらてらと光っていた。おそらく、それはカインの唾液によるものだったが、彼がそれを判断することはできなかった。
モンスターの腕がカインの胸元をくすぐるように行き来して、彼の思考を奪う。幾度か思わせぶりに腕は往復して、からかうように彼の胸に体液をこすり付ける。
(なに、これ……)
理解の範疇を超えたモンスターの動きに、カインは困惑する。心なしか体が熱い。息も荒くなり、自分の体がどうかしてしまったことを悟る。
なにがおこっているのだろうと考えていると、胸元をいたずらに動いていた腕が胸の飾りに触れた。
「ふ、ぁ!」
その瞬間、カインの体に甘い痺れが走る。先ほどまでとは違う、強烈な刺激にカインは眩暈がした。
こんなの、おかしい。
そう思っても、体に感じる疼きは霧散しない。幾度か左右の尖りを触られ、カインの目は潤み始める。彼は自分の目に映る光景が信じられなかった。
モンスターの体液で汚れる肌。身体を撫でる不気味な触手。色鮮やかな胸の頂点。
――そして、緩く反応を示す自身のそれ。
「あ、やっ…やめ!」
カインが気付いたと同時に、モンスターはそこへ腕をのばす。必死に抵抗しても動きは止まらず、ついにカインのものに触手が絡みつく。
刹那、全身をはしった強烈な快感。カインは目を見開いて、首をそらせる。彼の喉元を舐めあげるように腕が動く。
すでにカインは悟っていた。このモンスターの目的を。まさか男である自分が被害に遭うことはないと思っていたゆえに、絶望で目の前が暗くなる。
「はっ、ま、て、そこは……っ」
これ以上されたらどうなるかなんて、カインにだってわかっていた。自身を執拗にこするモンスターの腕に、カインはあられもない声で制止をかける。
しかし、通じていないのか、それともカインの声など無視しているのか、触手の動きは止まらない。
おそらくモンスターの意志は後者だが、カインはやめてくれと声に出さずにはいられなかった。
裏筋を丹念になぞり、上へ下へと腕は動く。
じゅぷじゅぷとした水音があたりに響き、カインは耳をふさぎたくなる。
彼の限界が近づくにつれて腕の動きは増していくが、快楽に沸騰しそうな頭ではそのことを認識することさえできない。
現実を受け入れたくなかった。
「は、くっ……んんっ!」
カインはそのまま、モンスターに促されるまま絶頂を迎えてしまう。
はあはあと息を乱しながら、カインは顔の色を蒼白に変えた。火照っていた頬は血の気がひき、唇が無意識に震えはじめる。
モンスターの手によって、果ててしまった。
その事実が、彼の胸に重くのしかかる。呆然自失となったカインは、触手が次の段階に進もうとしていることに気付けなかった。
カインの太ももを、ぬらりとモンスターの腕が這い上がる。後ろの蕾に達した瞬間、カインは再び体をこわばらせて首を振る。
モンスターに支配されるとしても、男として、そこは、――そこだけは、だめだった。
「やめっ…やだあ!」
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