■その他(他CP・複数等)■

サイレント(ライアサ・メフィアサ・藤メフィ前提)

「ねぇ,エンジェル」
「なんだ」
「ぼかぁ,ちゃあんと,わかってるよ」

意味ありげに声を発すると,前を歩く上司が振り向く。
長い金色の髪が青空の下できらきらと光を反射した。

「なんのことだ」

振り向いたその顔に現れていたのは激しい嫌悪と,少しばかりの好奇心。

「キミはぼくのこと嫌いなんだよね」
「あぁ」
「でも仕事だから仕方なく,一緒にいるんだよね」
「あぁ」

興味を失ったのか,またぼくに背を向け,歩き出す。

「キミはぼくのこと嫌いなのに・・・抱かれるんだね」
「ッ!!」

ビクッと上司の肩がはねるのを見て,ほくそ笑む。

「ぼかぁ,わかってるよ,エンジェル」
「・・・なにがいいたい」

先ほどの好奇心の代わりに,男の顔に現れたのは,動揺と,羞恥。

「寂しいんだろう,彼にかまってもらえなくて」

あははっ,と笑うと,彼の透き通るような白い頬にサッと紅が差す。
その様子はとても気分を高揚させたが,一方で酷く湿り気のある何かが胸の中に広がった。

「・・・ぉ・・・まえっ・・・なに,わけわからんことを」
「んん??わかってないの??」
「なに,がだ・・・っ」

怒りと羞恥にまみれ,小刻みに震えるその声が心地よい。

「エンジェル,あきらめなよ」
「____っ」

動揺する彼に間合いを詰め,逃げようとするその両手を掴む。

いくらこの男が戦という場面で有能であろうと。
こんな風に煽ってやれば,いとも容易く動きを封じることが出来る。

「あの男は,キミを見ていないよ」

ズキン・・・

そんな音が聞こえそうな,固まった顔。
見開いたその瞳に映るのは,なんだろうね。

「わかってるんだろう?あの男はいなくなったキミの先代を____」
「やめろっ!!!!!」

ものすごい力で腕を振り切られる。
彼が本気を出せば,ぼくには力では敵わない。
実際の腕力でも,権力でも。

だからこうして,言葉でじわじわと彼を追い込むのだ。

「・・・わかってる」
「ん?」
「そんなことは,百も承知だ・・・。おれだって,バカじゃない」
「へぇ?じゃあ何で___」
「藤本獅郎は,あいつは・・・聖騎士にふさわしくなかった」
「・・・」
「悪魔は藤本をずっとみていた。だから,藤本と同じ聖騎士になれば,もしかしたらと・・・期待していた」

「自分が・・・愚かしいな」

嘲るように,笑う。

「・・・・無様だ・・」
「エンジェ__」
「部下に体を弄ばれ・・・悪魔に心を奪われ・・・おれは,おれこそが・・・穢れている・・・聖騎士になど,ふさわしくない・・・っ」

ポロリ,と雫が頬を伝う。

ドクン・・・

違う。
ぼくはこんな上司を見たいわけではない。
わかっているのに。

胸の中に広がる湿った何かはぼくの中を満たしていく。

ドクン・・・

ナゼ泣く・・・?
ダレを想い・・・?



ぼくを,見てよ


一瞬だった。
ほんの一瞬だけ,理性を失っていた。

「ラ・・トニ・・・ング?」
「・・・」

気が付いたときには上司を押し倒していた。
ぼくが笑っていないことに気が付いた上司が怯えた目でぼくを見上げる。

「ほんっとさ・・・」

にぃ,と作り笑いを浮かべると,上司の顔が恐怖に染まっていく。
他の誰も気がつかない,ぼくの表情の変化までわかるくせに。
何で,ぼくの気持ちに気がつかない。

「もう,待つの疲れたよ・・・」

「なんのことだっ・・・はな,せっ」

ジタバタともがく上司。

「ねぇ,アーサー」

ファーストネームを呼ばれ,ピクリと動きを止める。

「賭けを,しようか」

「賭け・・・?」

眉をひそめるその顔をじっとみつめる。

「キミ,コクってきなよ」
「はっ!?」
「日本支部長に告白できたらキミの勝ち。できなかったらぼくの勝ち」
「・・・・おれに全然うまみが無いような気がするが?」
「だって。告白できて,しかもうまくいったらキミにいいことしかないじゃないか」
「・・・」
「どう?」
「何を賭ける・・・」
「体」
「からっ・・・おまっ,何を」
「体っていっても,負けたほうが勝ったほうの言うことをひとつだけきくってやつだよ。何,えっちなこと想像しちゃったの?エンジェル」
「ち、ちがっ」
「で?」
「・・・・わかった」
「そうこなくちゃ」

そういってぼくは,上司の無防備な唇をふさぐ。

「んんぅっ!?」

ジタバタを暴れる上司を押さえ込み,柔らかいそれを味わう。

ゆっくりと離れると,上司の目がキラキラと光っていた。

「泣くことないだろう??ぼかぁショックだよエンジェル!」
「・・・っ」

悔しそうに睨む上司ににやりと笑う。

「大丈夫,ぼくがあの人を忘れさせてあげる」

あの人に対する恋慕の言葉なんていわせないから。

このもやもやと渦を巻く,言葉にできない想い。
この人が気づいてくれる日は来ないかもしれない。

でも,大丈夫。

たとえこの声が届かなくても,ぼかぁ,ずぅっとキミのそばにいるからね。

「キミって,ほんと,すごいよね」

そういって暴れる彼の團服のボタンに手をかける。
これから起こることを想像したのか,上司は観念し,手を降ろす。

ほんと,この気持ちにだけは,キミは盲目だね。

「ライトニング・・・?」

「え」

ギュッと心配そうにぼくをみつめる上司。

「お前・・・」

おかしいな・・・・目があっついや。

人間らしい自分を久々に目の当たりにし,ぼくは露になった白い胸に静かに顔を埋めた。


オワリ

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