dear partner 11
着替えて皆が練習しているコートへ向かった。
コートからはたくさんのボールの打つ音が聞こえる。
汗を気にせずボールを追いかける皆はとても真剣で、いつもよりも格好良く見える、と思う。
「伊助、次の休憩の為のドリンクを作ろう」
「あ、はい!」
僕を待っていたのか、久々知先輩はフェンスの入り口に大量のドリンクボトルを持って立っていた。
あの細腕のどこからそんな力が出てくるのか…
「久々知先輩、僕も持ちます!」
「じゃあ伊助は、水をいれるそのやかんを持ってきてくれ」
「それだけ、ですか…?」
「このボトルはからっぽだし。俺だけで持てるのだ」
こうやって、久々知先輩の後ろを歩いていると、火薬委員会を思い出す。
久々知先輩も、タカ丸さんも、なんだかんだいいながら三郎次先輩だって大好きで。
委員会はまるで家族のようで、僕は委員会が楽しみだった事を思い出していた。
それが顔に出ていたのだろうか。久々知先輩は、僕をみてくすくすと笑った。
「久々知先輩?」
「いや、伊助は今はかわいい女の子なのに、こう一緒に作業していると…学園の井桁模様の服を着ていないのが違和感で…」
「あ、わかります!特に僕も久々知先輩も一つに結んでるので、後ろから見たら特に!ですよね」
もともと、僕も久々知先輩もどちらかといえば女顔だったから、女になろうとあまり変わらない。
だから余計に、洋服をきている自分たちに違和感を感じるのだろう。
「よし!火薬委員会のチームワークをみせてやろう!」
「おー!」
まるで前世(まえ)に戻ったようだ。
あぁ、後の二人は、今頃どこにいるんだろう。
「マネージャーにもいろいろ仕事はあるが、今回は基本的に合宿中は練習のサポートはしない」
「え、なんか…チェックしたりするものあるんじゃなかったでしたっけ?」
「まあ、いろいろあるけど。俺は初心者みたいなもんだからな。
あと、二人であの大量の人間の世話は出来なくもないがしたくないのだ」
「はぁ…」
「だからマネージャーというよりかは、雑用係りといってもいい」
ドリンクをせっせと作りながら説明してくれる久々知先輩は、なれているのかとても手早い。
もともと器用なのもあるだろうけど、僕の倍の速度でドリンクを作っていく。
「伊助、そんなに慌てなくても大丈夫だから」
「あ、すみません」
「じゃ、その伊助の持ってる分が終わったら台車持ってきてくれ。さすがにこの数は二人じゃ持てないだろうから」
「はい!」
僕が気にしないように、仕事を与えてくれる久々知先輩は、本当に出来る人だ。
この合宿中だけでも、足を引っ張らないようにしようと自分に気合を入れる。
(は組の底力をみて下さい!)
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短くてすみません…orz しかも久々知オンリー…;;